サラリーマンだった父への反感
僕にとってアンチの対象は、東京のサラリーマンだったおやじでした。僕はおやじが45歳のときの子どもで、15歳のときに彼は定年を迎えていた。サラリーマン人生の末期で鬱屈(うっくつ)を抱えていたおやじは、事あるごとに「俺はこれから稼げなくなる。おまえらは自分たちで食っていけ」と、家族を脅かしていました。はけ口にされる僕らは、たまったものじゃありません。その言葉を聞きながら、「サラリーマンになるのは絶対に嫌だ」というアンチの思想が、すっかり頭に染みついてしまった。その対極の世界が、梅棹さんの描くアフリカだったわけです。
梅棹さんは『女と文明』(59年)で、高度経済成長期におけるサラリーマンと専業主婦の関係性を論じて、「主婦」は無用だという、ラジカルな問題提起を行っていました。それはまさに僕が抱く「アンチサラリーマン」の合わせ鏡でした。
それ以前に、梅棹さんの存在自体が大スターでしたよね。「知の巨人」という形容そのものの存在ながら、若い頃の写真を見ると、めちゃくちゃかっこいい。そんな人がアフリカのサバンナに立っている。それだけで、憧憬(しょうけい)をかき立てられるに十分ですね。
取材・文/清野由美 写真/木村輝
[日経BOOKプラス 2022年5月9日付の記事を転載]
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