地方の仕事の面白さを知る

 地方の仕事は、交通の便が悪い現場で、予算がないことが普通です。それで腐っていたかというと、まったく逆で、都会から離れていた10年は、本当に楽しかった。へき地であることや、お金がないことで、面白いアイデアをいろいろと試せたのです。山に建築を埋めてしまった「亀老山展望台」(愛媛県)や、通常の5分の1以下の予算で造った能舞台「森舞台/登米町伝統芸能伝承館」(宮城県)などが好例ですが、その挑戦はすべて、僕の中の「アンチ20世紀」につながっています。

 アンチ20世紀とはつまり、資本制と近代家族の共犯関係への反感です。地方にはステキなおうちを買って飾りましょう、なんていう余裕は基本的になくて、親の代からのぼろぼろの家に住まざるを得ないという実情がある。それはそれで、もちろんつらい。でも、都会人の「お城」の中での閉じられた孤立に比べたら、田舎のごたごたのほうが、よほど根源的で人間らしい。

 建築に取り組む僕の論拠が、この本にはあります。

取材・文/清野由美 写真/木村輝

日経BOOKプラス 2022年5月16日付の記事を転載]

“隈建築”はどのようにして進化を遂げたのか

隈研吾氏が設計した国内の見るべき作品50を紹介。それぞれの魅力をキーワードで分類、カラーイラスト満載。専門的な解説、本人のロングインタビューも収録。旅先のガイドブックとしても使える一冊。

宮沢洋(画文)、日経BP、2640円(税込み)