伝え方が下手なせいで、ひょっとして損をしていませんか? 私たちには、「つい、言い過ぎやすい」「相手の言い過ぎに過敏になりやすい」性質があるといいます。脳科学者の中野信子さんによると、コミュニケーションがうまい人は皆、知らず知らずのうちにこうした性質への配慮ができているそうです。

 どのように伝えれば、自分自身がストレスをためずに良好な人間関係を築けるのでしょうか。本企画では、読者の皆さんの体験談を募集し、中野さんと「うまい伝え方」を考えるためのヒントを探っていきたいと思います。

「間違ったルール」を教えられた。あなたはどうする?

 突然ですが、ちょっと考えてみてください。あなたは、あるゲームに参加することになりました。しかし、そこで知らされたルールが、あなたが知っている「一般的なルール」と大きく違う。「私、間違えたルールを教えられちゃったな」と気付いた、そんな状況です。

 そんなとき、あなたならどうしますか?

 「自分のほうが正しいから、この正しいルールでやりましょう」と働きかけるか。それとも、「そうは言っても、こういうふうに言われたしな」と間違えて教えてもらったルールを守るか。

 この2つから選ぶとしたら、どちらが自分のタイプにより近いでしょうか。ぜひ、選んでからこの先を読み進めてください。

 さて、この「間違ったルール」に対する2タイプの接し方は、単に「ルールに対する考え方」や「性格」、「合理性」の違いによるものではありません。遺伝子を解析したところ、ドーパミン(神経伝達物質の1つ。幸福感ややる気に関係している)の分解酵素の活性具合が違うということが分かっています。つまり、「間違ったルール」でも従うか従わないかは、脳に違いがあり、私たちはその脳の反応に従って自分の行動を決めているということなのです。

脳の違いがコミュニケーションの取り方の違いに

 さて、こうした脳の違いは、コミュニケーションの取り方の違いとなって現れることも分かっています。

 まず、「間違っていると分かっていても指示されたルールに従う人」。このタイプはコミュニケーションにおいても、自分の気持ちよりも他人の気持ちを優先しやすいことが分かっています。言いたいことがあっても言えない、本音を打ち明けられない…ついため込んでしまいやすいのも、このタイプです。

 反対に、「自分が正しいなら、自分のルールでやろうとする人」。こちらのタイプは、相手の気持ちよりも自分の気持ちを優先しやすいことが分かっています。前回お話しした「つい、言い過ぎる」のもこのタイプですし、私自身は圧倒的にこのタイプだと思っています。