呼び方はどれが正解なのか分からないから、みんな困っている

―― パートナーの呼び方は、近年どうして議論になっていると思いますか?

瀧波 時代が変わっているのに「女は男に従うもの」という前時代的な価値観を内包している言葉を何も気にせず使い続けるのは、無理がありますよね。限界が来ているんだと思います。本当は「夫さん」でなくとも、誰に対しても、どんな価値観でも、どんな力関係にでも使って失礼ではない言葉があるとベストですよね。ただ、現時点ではそれがないから何が正解なのか分からないし、みんな困っているんだと思います。

―― 「夫さん」以外にもっといい言葉が出てきたら、そちらを使いますか?

瀧波 そうですね。ただ、あんまり期待はしていません。もともと存在していた言葉って、すごく強いんですよ。だから、その中から選んだほうが使いやすいし、人々に浸透していくのかなと。一つの言葉はいろんな言葉と結びついているから、その中から気を付けて、うまく使っていくことが大事だと思います。

 それから誤解のないように言っておきたいのですが、私は自分で使うことには抵抗はありますが、「ご主人」「旦那」が悪い言葉だとは思っていません。

 友達が「主人」という呼び方を通しているなら、その呼び方にあわせて会話の中で「ご主人」と呼ぶのはいいと思います。他人の家庭のパワーバランスはすごく繊細な問題なので、そこに土足で入り込まないマナーも必要です。

 私は自分が「夫さん」を使っているから、他人にも使ってほしい、置き換えてほしいとは思っていません。選択肢の一つになればいいな、という気持ちです。

―― そうすると自分や他人のパートナーを呼ぶときに、一番大事にすべきことは何でしょうか。

瀧波 相手に対する敬意です。「その場にその本人がいてもその呼び名で呼べるかどうか」を考えてみると分かりやすいと思います。例えば、飲み会に後輩のパートナーが遅れてやって来たときに、「おい、お前の嫁が来たぞ」というのは私の中ではアウトです。その人が同じ場所にいるときに使っても、相手に対して失礼ではない言葉が正解なのではないでしょうか。

 究極は、異性婚・同性婚・事実婚問わず、パートナーを指す呼び方が現れれば一番ですが、一足飛びには到達できません。まずは自分の使う言葉を見直していきたいと思っています。

構成/三浦香代子(日経xwoman)

瀧波ユカリ
漫画家・文筆家
1980年北海道生まれ。2004年に4コマ漫画『臨死!!江古田ちゃん』(講談社)でデビュー。以後、漫画とエッセーを中心に幅広い創作活動を展開。著書に漫画『モトカレマニア』(講談社)、母のみとりを描いた、コミックエッセー『ありがとうって言えたなら』(文芸春秋)など、著書多数。