大好評の心理カウンセラー山根洋士さんによる「自己肯定感が低めの人」のための企画。今回のテーマは「親との関係」について。ほどよい親との距離感の保ち方をQ&Aでお伝えします。

親との関係に息苦しいのは、親離れできていないから?【1】
・親の「名前呼び」で、親との関係がぐっとラクになる【2】←今回はココ

Q. 親子関係がこじれやすいのはどうして?

A. 「理想の親子」像が邪魔しているのかも

“かわいそう”は見下している証拠

 親と友達のように仲のいい関係を築きたいからこそ、親の好意に対してノーといわないという人もいるだろう。「せっかくの好意を断って傷ついたらかわいそう」というやさしさもあるかもしれない。しかし、「かわいそうと思う気持ちは決してやさしさではない。相手を見下している証拠」と心理カウンセラーの山根洋士さんは指摘する。

 「自分と対等か上に見ている相手なら、自分の事情や気持ちを理解してもらえると思うから、ちゃんと伝えて断るもの。それをしないのは、相手は状況も気持ちも理解できないような心の狭い人間だと下に見ている可能性がある」(山根さん)。

 そもそも、友達のように仲のいい「理想の親子」像というのは、多くの人にとってはただの“メンタルノイズ”だと山根さんはいう。

 メンタルノイズとは“心のクセ”からくる「こうあるべき」という思い込みのこと。「主に、生まれた時代や家庭環境、学校教育、テレビ番組などの外的要因からでき、潜在意識の中にあるもの。自分の意思とは関係なく発動して行動を妨げたり、無駄な行動を起こさせる。親にノーといいたいのにいえなくてモヤモヤしたら、理想の親子像はただのノイズだと思いだして。そうすることで本音を出しやすくなってノーといえるようになる」(山根さん)。

もう大人なのだから、人生の責任は自分で

 一方、小さいころにやりたいことをやらせてもらえなかったという不満を引きずっている人も、「理想の親ならこうしてくれたはずなのに」という理想の親子像ノイズが関わっているという。

 「親に対する過去の不満を引きずるのは、現在の自分を受け入れられていないという自己肯定感の低さの表れでもある。小さいころに親にどう育てられたかという過去の経験は変えられないが、それはそれとして、自分で自分の人生を開拓していくようにならなければ、いつまでも親子関係は改善しないし、自己肯定感も取り戻せない」(山根さん)。

 仲のいい理想の親子になりたい、自分がこうなのは親のせいだとモヤモヤしたら、「こう思うのはメンタルノイズのせい」と振り切って、今の自分と親に向き合うよう切り替えていこう。

親子関係をこじらせるのは、「理想の親子像」ノイズ
 「仲のいい親子であるべきという考えは、親子関係をこじらせる最大のメンタルノイズ」と山根さん。別々の人間なので、合わないことがあるのは当然だし、相手に理想の親、理想の子であることを求めすぎるとかえって衝突しやすいという。「親との仲も友人関係と同じ次元で、気が合う、合わないで考えていい」(山根さん)。
「理想の親子」は幻想。女友達のようになんでも気が合うとは限らない
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