ジェンダーギャップが最も小さい業界は

 世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数では、男女差がない(平等である)状態を1で表します。数値が1に近いほど平等に近く、0に近いほど男女差が大きいことを意味します。日経xwomanで設定した4つの指標を基に、業界別のジェンダーギャップのスコアを算出したところ、4指標の平均値(総合スコア)が高い順に、下表のようになりました。

4つの指標それぞれにおいて、他業界と比較した場合の男女差の大小を色で示した。緑=男女差が小さい、赤=男女差が大きいことを表す。総合スコアは4つの指標のスコアを単純平均したもの。WLB=ワークライフバランスの略
4つの指標それぞれにおいて、他業界と比較した場合の男女差の大小を色で示した。緑=男女差が小さい、赤=男女差が大きいことを表す。総合スコアは4つの指標のスコアを単純平均したもの。WLB=ワークライフバランスの略
13業界別の総合スコア
13業界別の総合スコア

 順位はあくまで参考であり、注目したいのはスコアの数値です。なぜなら、最もスコアが高い「医療・福祉」業界ですら総合スコアは0.763と、男女平等を示す「1」からは遠い状態だからです。

 「平等が『1』であることを考えれば、13業界平均の0.559というスコアも、さほど高くありません。情報通信業から製造業まで、0.500~0.550の間に8つの産業が入っていて、この8産業にはほとんど差がないとも言えます。日本全体として低水準であり、どんぐりの背比べであると言えそうです」と、原さんは指摘します。

 各業界のスコアを詳しく見てみると、その業界の特徴が分かります。例えば「医療・福祉」業界では、労働参加のスコアは0.952と高く、管理職のスコアも他業界に比べれば高いものの、ワークライフバランスのスコアは0.551にとどまっており、働き方や家事育児の分担においては男女差が大きいことが分かります。また、「建設業」「電気・ガス・熱供給・水道業」などは、4指標のいずれを見ても男女差が大きいことが分かりました。

「男女差」だけを追いかけると見逃してしまう点も

 今回の調査は、経済分野のどこに男女格差があるのかを調べたものであり、業界ごとの労働環境の良しあしを示すものではありません。例えば「賃金」の指標においては、男女の賃金を比べて差が大きいかどうかを調べていますが、賃金の額の高さそのものは考慮していません。このため、スコアが高い(男女差が少ない)業界でも、実際の賃金水準は男女ともに低いケースがあります。

 さまざまな人が働きやすさと働きがいを得て活躍するためには、男女を問わず全体的な賃金の上昇や、ワークライフバランスの向上などが求められます。次の記事からは、4指標それぞれの傾向を詳しく解説します。

調査に使用したデータソース
A:労働参加の平等性
1.正規雇用の男女比…総務省 労働力調査 2021年度
2.フルタイム勤務者の平均勤続年数の男女差…厚生労働省 賃金構造基本統計調査 2021年
3.専門職比率の男女差(専門職/就労者数の男女比)…総務省 国勢調査 2020年

B:管理職登用の平等性
1.課長職の男女比…厚生労働省 賃金構造基本統計調査 2021年
2.部長職の男女比…厚生労働省 賃金構造基本統計調査 2021年
3.役員の男女比…厚生労働省 雇用均等基本調査 2020年度

C:賃金の平等性
1.正規雇用における賃金格差…厚生労働省 賃金構造基本統計調査 2021年
2.非正規雇用における賃金格差…厚生労働省 賃金構造基本統計調査 2021年
3.課長職における賃金格差…厚生労働省 賃金構造基本統計調査 2021年

4.部長職における賃金格差…厚生労働省 賃金構造基本統計調査 2021年

D:ワークライフバランスの平等性
1.有給休暇取得率の男女比…厚生労働省 就労条件総合調査 2021年
2.育児休業取得率の男女比…厚生労働省 雇用均等基本調査 2020年度
3.平日の家事・育児時間の平均値の男女比…リクルートワークス研究所 全国就業実態パネル調査(JPSED) 2021年
4.テレワーク経験者の男女比…リクルートワークス研究所 全国就業実態パネル調査(JPSED) 2021年
「ジェンダーギャップ」に関するアンケート
日経xwomanでは「ジェンダーギャップ」に関する読者アンケートを実施しています。下記よりぜひご回答ください! 設問数:23問
所要時間:5~10分程度
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文/久保田智美(日経xwoman編集部)

原ひろみ
明治大学 政治経済学部 准教授
原ひろみ 東京大学経済学部経済学科卒業。博士(経済学)。労働政策研究・研修機構(JILPT)副主任研究員、日本女子大学准教授などを経て、2022年4月から現職。専門は労働経済学、実証ミクロ経済学。主な著書に『職業能力開発の経済分析』(勁草書房)、『非正規雇用のキャリア形成:職業能力評価社会をめざして』(同、共編著)がある。