日経xwomanでは、経済分野の男女差に着目し、世界経済フォーラム(WEF)によるジェンダーギャップ指数の手法に倣って業界別のジェンダーギャップ課題を分析しました。自分が働く業界や、働きたいと思っている業界の特徴や課題を知ることで、より働きやすい社会を実現するためのヒントにしてもらうことが目的です。前回の記事「管理職の男女差小さい業界は?専門性もキャリアの武器に」に続き、今回は「賃金の平等性」と「ワークライフバランスの平等性」に着目し、業界別の傾向を見ていきます。

■業界別ジェンダーギャップの順位と算出方法、使用した統計データの一覧は、記事「ジェンダーギャップ大きい業界は?独自試算で明らかに」を参照してください。

すべての業界で、女性の正規雇用者の賃金は男性の8割未満

 「賃金の平等性」は、「正規雇用者」「非正規雇用者」「課長職」「部長職」の4項目において、業界別に男女の年間平均賃金を比較し、スコアを算出しました(以下、賃金=年間平均賃金を指す)。

■「賃金の平等性」13業界のスコアと男女比
■「賃金の平等性」13業界のスコアと男女比
注)1に近いほど平等、0に近いほど不平等。各項目において、他業界と比較した場合の男女差の大小を色で示しており、緑=男女差が小さい、赤=男女差が大きいことを示す。男女比は男性を分母、女性を分子(女性/男性)として算出。1を上回った場合は平等とみなして1を記入している。スコアは加重平均で算出しており、男女比の単純平均値とは異なる

 まず、正規雇用者のみで比較したところ、13業界すべてにおいて、女性の賃金は男性の8割未満にとどまっていました。中でも「金融・保険業」は最も格差が大きく、女性は男性の57.1%しか稼げていません。

 では同じ役職で比べるとどうでしょうか。課長職では、格差は依然として残るものの、やや縮小し、すべての業界で女性の賃金は男性の8割以上となります。中でも、IT(情報技術)、マスコミ、ゲーム業界などが含まれる「情報通信業」は唯一、課長職における女性の賃金が男性を上回っていました

 一方で、部長職となると、13業界中8つの業界で賃金格差の再拡大が見られました。「医療・福祉」の部長職の女性の賃金は、男性の部長職の66.7%、「建設業」では69%となっています。

 指標の選定を監修した明治大学准教授の原ひろみさんは、理由として「2つの可能性が考えられます」と分析。「1つは、同じ部長職でも女性は男性に比べて賃金スケールの下位の仕事に割り当てられていること。もう1つは、賃金の低い企業で女性が部長に昇進する傾向があること」。厚生労働省の雇用均等基本調査(2020年度)によれば、企業規模が小さくなるほど部長相当職の女性比率が上昇する傾向が見られます。別の調査では、特に製造業で企業規模が小さいほど賃金が低くなることが指摘されています(*1)。賃金が高い職場に男性が集まり、女性は賃金が低くなりがちな中小企業で部長などの管理職に昇進している人が多い、という可能性もあります。

 次に、実際の賃金の額を見てみましょう。

調査した13業界と代表的な職業
●建設業…土木、建築、大工・左官などの職別工事業、設備工事業など
●製造業…食料品、繊維、木材、紙、化学、プラスチック製品、金属、電機、輸送用機器など
●電気・ガス・熱供給・水道業
●情報通信業…通信、マスコミ、ゲーム、インターネットなど
●運輸・郵便業…鉄道、旅客、貨物、航空、倉庫など
●卸売・小売業…繊維・衣服、飲食料品、建築材業などの卸売業、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストア、書店、ガソリンスタンドなど
●金融・保険業…銀行、信用金庫、貸金業、クレジットカード、保険など
●不動産・物品賃貸業…不動産取引、不動産賃貸・管理、各種リースなど
●学術研究・専門・技術サービス業…経営コンサルティング、広告、設計、法律・行政書士などの事務所、獣医、自然科学研究所など
●宿泊・飲食サービス業…宿泊業、飲食店、持ち帰り・配達飲食サービスなど
●生活関連サービス・娯楽業…旅行、冠婚葬祭、映画館、スポーツ施設、洗濯・理容・美容業など
●教育・学習支援業…学校教育、学習塾、図書館、スクール講師など
●医療・福祉…病院、保健所、保育所、老人福祉・介護など