高齢者は東京圏に一極集中。改善策は

 一方で、高齢化には複数の課題があります。最近、「人口の東京圏一極集中」が再び顕著になっています。総務省の住民基本台帳人口移動報告によると、東京圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)への人口転入超過は2021年4月で14万6千人と、ここ数年、拡大が続いています。原因は、高度成長期に地方から首都圏に移り住んだ大量の若者が高齢化し、そのまま東京圏に住み続けていることや、大部分が退職したり、介護が必要になったりして働く人材が不足し、地方の若者が東京圏へ働きに来ることなどが考えられます。それは、必然的に「年金マネー」も首都圏に集中することも意味します。理想を言えば、高齢者のIターン・Uターンを支援する制度の充実が望ましいですが、現状は今後の政策課題といったところでしょう。

 現段階で街や企業が取り組める高齢者対策としては、高齢者が健やかに過ごすためのコミュニティ、つまり「居場所づくり」が挙げられます。

 日本経済新聞社・産業地域研究所が14年に実施したアンケート調査で、首都圏に住む60歳から74歳の男女1236人に、退職後の居場所について「あなたは自宅以外で定期的に行く居場所がありますか」と聞いています。図書館やスポーツクラブなどの回答があるなか、「見つからない/特にない」と回答した人も多かったのです。よく、病院の待合室で談笑している高齢者を見かけますが、それほど街の中に高齢者の居場所がないのです。

 日本と同じく、65歳以上の人口比率が世界平均よりも高いヨーロッパを見てみると、街の中心部は自動車交通が抑えられ、街の中に座れる場所が沢山ある、「歩いて楽しめる街」が多い。これは、ヨーロッパの各都市が1980年代頃から計画的に進めてきた街づくりです。日本の都市も、「歩いて楽しめる街」にしていくことが、福祉的な面はもちろん、自動車によるCO2削減や地域再生の面でも必要になります。

ヨーロッパの中心部は自動車交通が抑制され、座れる場所が沢山ある「歩いて楽しめる街」が多い(写真はチューリヒ/提供 広井良典さん)
ヨーロッパの中心部は自動車交通が抑制され、座れる場所が沢山ある「歩いて楽しめる街」が多い(写真はチューリヒ/提供 広井良典さん)