若い世代の社会保障充実と、それを実現させる税財源の検討を

 これらの現状と予測を基に、将来の日本のために考え得る策として、2つの社会保障強化が挙げられます。

1.人生前半の社会保障
日本の社会保障はこれまで、高齢者を中心に論じられてきました。終身雇用の時代には、現役時よりも退職後の人生への保障が必要だったからです。終身雇用制度が崩壊し、非正規雇用の若者が増加している現代においては、現役時にも多種のリスクが伴いますので、公的住宅や地域移住への支援が必要です。併せて、高等教育と就学前教育の私費負担を減らすことも検討すべきでしょう。

2.ストックへの社会保障
これまで社会保障に関する議論は、年金、医療、生活保護などフロー(収入)に関してでした。ですが実際は、貯蓄、住宅、土地などストックのほうが、格差は大きいのです。住宅は、生活の基盤としてしっかりと保障される必要があります。土地については、日本では私的所有物の意識が強いことに加え、家族以外への継承が難しく、結果として空き家やシャッター街として放置されています。人口減少社会においては、住宅や土地を公共性というテーマでとらえていく必要があります。

 そして、これらの社会保障をまかなうために、3つの税財源を見直すべきだと考えます。

 1つは、消費税。

 高齢化に伴い、政府支出の最大項目は社会保障になっていますが、それに必要な税を上げることには多くの人が反対しています。その結果、日本は既に1200兆円超の借金を、将来世代にツケ回ししています。ヨーロッパが消費税を20%以上にして社会保障を充実させているように、日本も消費税を引き上げながら社会保障の水準を維持し、かつ将来世代への借金の先送りをやめることが重要です。

 次に、相続税。

 親から子への継承の連続性は、生まれながらの格差を生みます。人生前半の保障を充実させ、人生のスタートラインを共通にしていくために、相続税を強化し、人生前半の保障に充てることが求められるでしょう。

 最後に、環境税。

 多くのヨーロッパ諸国が、労働や資本に対する課税から、資源・エネルギーの利用や汚染排出など環境関連行為に対する課税にシフトして、環境税収を社会保障に充てる政策を進めています。これも日本が見習うべき点です。

 税のとらえ方や社会参加意識の転換は、人口減少と高齢化社会において、大きな課題です。いずれにしても、これまでの「拡大成長すれば豊かになる」という思考により積み上げてきた1200兆円超の借金を将来世代に背負わせないよう取り組むことが、持続可能な社会の実現に欠かせません。

取材・文/力武亜矢(日経xwoman)

広井良典
京都大学こころの未来研究センター教授
広井良典 ひろい・よしのり/1961年、岡山市生まれ。東京大学教養学部卒業、同大学院修士課程修了後、厚生労働省勤務、千葉大学法政経学部教授を経て16年より現職。01年-02年はMIT(マサチューセッツ工科大学)客員研究員を務める。専攻は公共政策及び科学哲学。『日本の社会保障』(岩波新書)でエコノミスト賞、『コミュニティを問いなおす』(ちくま新書)で大仏次郎論壇賞受賞。他に『ポスト資本主義: 科学・人間・社会の未来』(岩波新書)、『人口減少社会のデザイン』『無と意識の人類史 私たちはどこへ向かうのか』(以上東洋経済新報社)などの著書がある