自然エネルギーへシフトするカギは「バランス」と「バッテリー」

 ハワイ州法による発電部門での脱炭素化目標は、2030年に40%、40年に70%、45年に100%です。ハワイ州には大きくハワイ島、マウイ島、オアフ島、カウアイ島の4つの島があり、それぞれに特徴的な取り組みを進めています。

 キラウエア火山を有するハワイ島は、地熱発電が自然エネルギーへのシフトに貢献しています(18年、キラウエア火山噴火による溶岩の影響で一時停止も、現在は約70%が再稼働)。

 マウイ島は巨大な風力発電システムで電力供給に貢献。

 カウアイ島は19年に、数時間程度ですが、100%自然エネルギーだけで全島内への電力供給を実現しました。米国でもっとも「再生可能エネルギー発電100%」が現実的な島といっても過言ではありません。

 人口が最多のオアフ島は、他の3島に比べると実現スピードは遅いですが、太陽光や風力などでの発電を進め、25年に40%を達成する見込みです。

 オアフ島は、住宅の屋根(ルーフトップ)への太陽光発電の設置は進んでいますが、これだけでは安定供給に問題が残ります。分散型の太陽光発電は、地産地消であり、レジリエンシー(※)の向上に役立ちますが、設置ができない施設も多く、発電コストも割高です。

 そこで、自然エネルギーへシフトするためにハワイ州が始めた取り組みが、「大型と分散型のバランスの良い組み合わせ」と「バッテリーの併設」です。バッテリーは、自然任せで出力が安定しない再生可能エネルギー発電の欠点を補います。分散型を補完する大型のバッテリー併設施設は、カウアイ島ではすでに発電を開始していますが、オアフ島でも23年ごろから発電を開始すると予測しています。

 現在のハワイ電力の石油火力発電所からの買電コストは0.10~0.40ドル/kWhですが(原油価格に連動する)、大型の太陽光発電施設に4時間程度のバッテリーを併設した場合は0.08~0.12ドル/kWhですから、コスト面でもメリットがあります。

(※)組織や事業が停止などの危機に直面した場合に、影響が及ぶ範囲を小さくし、できるだけ通常と変わらない状態にする能力
分散型の太陽光発電は、地産地消でありレジリエンシーの向上に役立つが、設置ができない施設も多く、発電コストも割高(写真/PIXTA)
分散型の太陽光発電は、地産地消でありレジリエンシーの向上に役立つが、設置ができない施設も多く、発電コストも割高(写真/PIXTA)

 ハワイ州は、地域マイクログリッド(エネルギー自給自足施設)の導入も積極的に進めています。例えば、オアフ島にあるシングルマザー向けビレッジ。プレハブ住宅の屋根に太陽光発電パネルを設置し、「バッテリー」「プロパンガス自家発電」「太陽熱温水器」を組み合わせて、電気代を最小限に抑えています。光熱費は基本的になく、電力網からいつでも切り離すことが可能です。このようなマイクログリッドが、今後ハワイで増えるでしょう。

 プレハブ住宅は、日本企業からの寄付です。日本で災害時に使用した仮設住宅を、ハワイに運んで再利用しています。日本企業がハワイで好かれる理由がこういうところにもあります。

 全米で一足先に脱炭素化が進んでいるハワイ州は、他州のお手本として注目されています。これからクリーンエネルギーに関わる事業を米国で展開したい企業は、まずハワイ州のパイオニアになることで、全米にビジネスチャンスが広がるかもしれません。

取材・文/力武亜矢(日経xwoman)

阪口幸雄(さかぐち・ゆきお)
阪口幸雄(さかぐち・ゆきお) シリコンバレー在住36年。米国エネルギー問題研究者。国立大学理学部を卒業。大手電機メーカーに就職後、シリコンバレーオフィスでASICやマイコンの開発に従事。96年に退社、シリコンバレーのベンチャー企業に副社長として参画。2002年に起業し、ハイエンド画像処理LSIの開発・量産・販売に携わる。10年よりClean Energy Research Lab.代表。著書に『「脱炭素化」はとまらない!―未来を描くビジネスのヒントー』(共著)。ビールとハワイの夕陽をこよなく愛する