「脱炭素化・分散化・デジタル化」がエネルギー分野の潮流に
「2050年カーボンニュートラルの実現」に向けて、徹底した省エネでエネルギー消費の削減を進めつつ、脱炭素化に加えて、分散化・デジタル化することが、近年のエネルギー分野の潮流です。
分散化とは、電源(電気をつくる方法)を複数つくることをいい、「分散型エネルギーシステム」と呼ばれています。
分散した電気の流れは、デジタル化された監視制御装置で把握して、エネルギーの需給バランスを図ります。これにより、安定したエネルギー供給の実現につながります。
他に、太陽光発電や風力発電の電気が余った時に、電熱線で温水などの熱に変えて使って貯蔵したり、EV(電気自動車)に充電したりするなどの再生可能エネルギー電力を中心に、熱、交通など他の分野につなげ、社会全体の脱炭素化を図る「セクターカップリング」という取り組みも、欧州で始まっています。日本でもセクターカップリングの実用化に向けて動き出しています。
また、日本が取り組む地球温暖化対策を推進するための法律「地球温暖化対策推進法」(1998年成立)の一部改正法が、21年5月の参院本会議で成立しました。
改正法のポイントは、「2050年までの脱炭素社会の実現」の方針を明記し、市町村が経済性や地形、地域住民の了解などの条件を満たした上で「促進区域」を指定して再エネ導入の加速を図ること。脱炭素経営の促進に向けた企業の温暖化ガス排出量情報のデジタル化・オープンデータ化の推進、などが盛り込まれました。
さらに、企業の温暖化ガス排出量に係る算定・報告・公表制度について、電子システムによる報告を原則化。これまで国民や機関投資家が開示請求をしなければ開示されなかった事業所ごとの排出量情報について、開示請求の手続きなしで公表される仕組みにしました。投資家がESG(環境・社会・ガバナンス)に配慮している企業に投資するESG投資が世界的に拡大する中、企業の脱炭素経営を促す法改正となるでしょう。