2021年4月、菅首相は2030年に向けた温暖化ガスの削減目標について、13年度に比べて46%削減することを目指すと表明。「さらに50%の高みに向けて挑戦を続けていく」と発表し、温暖化ガス削減に向けた「脱炭素」への注目度が高まりました。政府の発表や職場で見聞きする「脱炭素」は、取り組むには大がかりな印象があり、身近に感じにくい面がありますが、職場や個人の1アクションでできる脱炭素の取り組みがあると、国際環境保全団体・世界自然保護基金(WWF)ジャパンの小西雅子さんは言います。

このままの経済活動が続けば、地球環境に取り返しのつかない悪影響が及ぶ

 国や企業が脱炭素へ向けた取り組みを強化していることもあり、世の中の環境問題への関心が高まってきました。WWFとしても、うれしい限りです。

 WWFの環境問題への取り組みと脱炭素は、切っても切り離せない関係です。世界が脱炭素へ向かって加速し始める理由となった地球温暖化によって、洪水や干ばつなど異常気象が深刻化し、氷河が溶け、海水面は上昇し、動植物の生態系を変え、森林火災などが加速しています。

 もしも世界がこのままの経済活動を続けた場合、21世紀末に約4度の気温上昇が予測されます。地球はこれまでも、氷期から産業革命前にかけて約4~7度の平均気温の変化があったとされています。しかしそれは、1万5000年の間に起こった自然現象での話です。

 4度上がると、40度を超える猛暑が慢性的になります。すると、高温に弱い作物が育たず食料生産量が大幅に減少したり、大雨・暴風・洪水や干ばつなどの異常気象が激甚化したりします。もはや、取り返しのつかないような甚大な被害が及ぶリスクがあるのです。

地球温暖化は、猛暑をもたらし、氷河を溶かし、海水面を上昇させ、動植物の生態系を変え、洪水や干ばつなどの異常気象を激甚化させている(写真はイメージ)
地球温暖化は、猛暑をもたらし、氷河を溶かし、海水面を上昇させ、動植物の生態系を変え、洪水や干ばつなどの異常気象を激甚化させている(写真はイメージ)

 これを危機的状況と捉えた世界各国により国連で交渉が進められ、2015年に採択されたのが「パリ協定」です。産業革命前からの平均気温の上昇を2度未満に抑え、さらに1.5度に抑える努力を追求することが、世界の長期目標として定められました。現在、人間活動によって産業革命前からすでに、約1度上昇しています。1.5度までに抑えることを目指して、二酸化炭素などの温暖化ガスの排出量を減少させることが急務です。

 温暖化ガスの排出量を減少させ、いずれゼロにすること。つまり脱炭素化は、世界的な課題となりました。これにより、世界市場を相手にする企業は、脱炭素への取り組みなしには経営ができない状況になりました。世界トップクラスの企業グループは「脱炭素の取り組みをしない企業とは仕事をしない」という姿勢に変わっています。また、世界の機関投資家たちが、脱炭素への経営努力をしている企業へ投資するように変化してきました。

 脱炭素は世界の課題。それだけに、職場や一個人レベルでは何もできないと考えられがちですが、けっしてそうではありません。