遊んだり買い物したり仕事をしたり…さまざまな目的を持った人たちが集う東京・渋谷。日本有数の繁華街であるこの街に日々、大量の生ごみが出ています。2021年に立ち上がった合同会社渋谷肥料は、渋谷で排出された生ごみを活用したサーキュラーエコノミー(循環型経済)のモデルをつくり出すプロジェクト。代表を務める坪沼敬広さんと、高校生のときからこのプロジェクトに参画している清水虹希(にき)さんに、立ち上げの背景や渋谷肥料が目指す未来について話を聞きました。

渋谷ハロウィーンをニュースで知り、ごみ問題を意識

 「渋谷肥料」の発端は、「渋谷から世界へ発信したいアイデア」がテーマのアイデアソン(アイデアをマラソンを組み合わせた造語で、新たなアイデアを創出するためのイベントのこと)。2019年のことでした。

 当時は渋谷のハロウィーンで街がごみだらけになることがたびたびニュースで報道されており、アイデアソンに参加した坪沼敬広さんはこの問題に着目しました。坪沼さんはアイデアソン当日に出会った参加者と一緒にごみ問題と向き合うアイデアを提案し、見事優勝しました。

 改めてごみ問題について調べてみると、渋谷区は、飲食店やオフィスなどから出る「事業系ごみ」の中で、生ごみの割合が一番多いことが分かりました。「せっかく選ばれたのならさらに意味のあるものにしたい」とアイデアをブラッシュアップし、渋谷から出るごみを再利用して肥料をつくり、それを渋谷で販売する「新たなサーキュラーエコノミー(循環型経済)」を考案しました。

渋谷肥料の代表の坪沼敬広さん。プロジェクトのコンセプト設計と各プロダクトのマネジメントを手掛ける
渋谷肥料の代表の坪沼敬広さん。プロジェクトのコンセプト設計と各プロダクトのマネジメントを手掛ける

 こうして「渋谷肥料」プロジェクトは、「渋谷を『消費の終着点』から『新しい循環の出発点』にシフトできないか?」をテーマに掲げ、本格的に動き出します。とはいえ、普段はクリエイティブディレクターとして働く坪沼さんにとって、環境事業を立ち上げるのはゼロからのスタート。その挑戦を支えたのが、出発点である渋谷スクランブルスクエア内の交流施設「SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)」でした。坪沼さんはこの場所に出向き、プロジェクトに共感する企業や仲間を探すことから始めました。

 「サーキュラーエコノミーに関心を持っていた人は多く、たくさんのつながりができました。その一つが茨城県にある日立セメント。セメントメーカーなのですが、食品廃棄物のリサイクル事業も展開しており、実際に渋谷の生ごみを再利用した肥料でさつまいもを栽培しています。まずは、このさつまいもを仕入れて新たなスイーツを開発しました」

 現在、商品開発ディレクターとしてチームをけん引する清水虹希さんと出会ったのも、SHIBUYA QWSでした。