「介護はいらないけれど相談相手がほしい」高齢者に、孫世代が寄り添う
MIHARU(東京・渋谷)が提供している「もっとメイト」は、コンシェルジュと呼ばれる若いスタッフが高齢者の自宅へ定期的に訪問し、「相棒」として生活に寄り添うサービス。利用しているのは主に、「介護が必要なほどではないけれど、ちょっとした悩みを相談できる相手がほしい」と考える高齢者です。
相棒として訪問したコンシェルジュは、外出の付き添いやオンライン予約の代行、書類の作成・整理など、介護の資格がなくてもできるお手伝いをしています。
依頼内容でもっとも多いのは、スマホの使い方やインターネットのつなぎかたなどデジタル関連。アプリをインストールしたり一緒に携帯電話ショップへ訪れて契約の見直しにアドバイスをしたりなど、若い人にとって当たり前のことが依頼する高齢者から喜ばれるといいます。
代表を務める赤木円香さんは、「高齢者の中には、介護や修理など資格を持つ専門家が行うサービスだけでなく、ささいな悩みごとを解決するサービスを求めている人もいるのでは、と思ったんです。そのような人たちに、何かできないかと考えた結果、もっとメイトのアイデアにたどり着きました」とサービス立ち上げの背景を説明します。
「一般的には、『高齢者の支援』は『=介護』と結びつけて考えがちですよね。しかし健康で身の回りのことを自分でできる元気な高齢者にとって、介護されることは自尊心が傷つく場合もあるんです。例えば、高齢者という先入観で、耳の遠くない人に対して大声で話しかけると、『年より扱いするな』と怒る人もいます」
料金は1時間5000円から。高齢者の相棒となるコンシェルジュは、学生が中心です。福祉学科の大学生や介護福祉の専門学生だけでなく、「高齢化社会」に課題を持ち、「自分には何ができるか」を学ぶために働いている人も多いといいます。しかし登録したら誰でも働けるのではなく、「潜在的なニーズの引き出し方」「安心感を与える雰囲気づくり」など、3時間に及ぶ実技と講習を受けて合格した人のみ、コンシェルジュになることができます。
コンシェルジュは高齢者と関わり合う中で、裁縫や身だしなみのマナーなど、同世代ではなかなか話題に出ない生活の知恵を学ぶ場になっているといいます。赤木さんは「コンシェルジュは高齢者と交流し、コミュニケーション能力や人間性を磨くことで、就職活動や今後の社会人経験にも生かしてほしい」と期待しています。