社会的孤立は日本の大きな課題です。自粛生活が長期化し、家族や特定のコミュニティ以外とのつながりがより希薄になるかもしれません。2021年2月に内閣官房に「孤独・孤立」対策室が立ち上がり、政府も対策に乗り出しています。孤立を解決する支援策として注目されているのが「世代間交流」。地域やさまざまな世代がつながり合うことで、社会的孤立や雇用機会を期待できます。今回は「高齢者」「母親世代」と関わり合う3つの民間サービスを紹介します。
社会孤立者が著しく多い日本
少子高齢化や核家族化により、「社会的孤立者」が多いとされている日本。OECD(経済協力開発機構)の調査によると、「家族以外と交流がない人」の割合は、先進国の中で日本がもっとも高くなっています。
さらに追い打ちをかけているのが、コロナ禍による自粛生活。人と直接関わらなければ感染リスクは抑えられますが、社会的孤立は進みます。また、家庭内暴力や引きこもりの増加など、新たな課題も生まれています。そんな中、世代間交流のできるサービスに注目が集まっています。
高齢者と若者が交流する高齢者施設
兵庫県神戸市新長田にある「はっぴーの家ろっけん」はHappyが運営する、2017年にできた6階建ての介護サービス付き高齢者施設。2~6階は約30人の高齢者が暮らしていますが、1階は入居者だけでなく、学生や外国人などさまざまな人たちが集まっています。
「はっぴーの家ろっけん」ができたのは、Happy代表の首藤義敬さんが地元・新長田で阪神・淡路大震災を体験したことがきっかけでした。当時の新長田は多くの工場が隣接していました。そこで働く人たちが住み、商店街もあり、「賑わいのある下町」だったといいます。
しかし阪神・淡路大震災によって、町は大きく変わりました。首藤さんも、この場所を去らざるを得なくなりました。しばらく他の土地で暮らしましたが、結婚を機に「最後のチャンスだから」と新長田へ戻ることを決意します。
「生まれ育ったこの町で、再び人と人がつながれる場所を作りたい」という思いから、さまざまな世代が集まる高齢者施設を立ち上げることにしました。
口コミやメディア出演で話題を呼んだこともあり、コロナ前は週に200人ほどが集まっていました。現在は、古民家を改修して「離れ」のような場所作りを検討したり、フリースクール事業やオンラインコミュニティやツールの導入など、新たな取り組みも積極的に行っています。
「最初の緊急事態宣言が出る前から、オンラインでコミュニケーションをとるようになりました。高齢者にとって、『介護や医療を充実させることだけが健康ではない』と思ったからです。オンライン上だとしても、『人と人とがつながって人間らしい日常を送ること』が本当の健康だと考えています」