障がいのある人もない人も、男性も女性もはきこなせるデザインに設計された巻きスカート「ボトモール」が、パリ・コレクション出場に向けて、着々と準備を進めています。手掛けているのは、2019年に設立された「一般社団法人日本障がい者ファッション協会(JPFA)」。一見、結びつかない福祉とファッションですが、車いすユーザーの「オシャレはあきらめた」という言葉がきっかけで、JPFAは立ち上がったといいます。ボトモールでパリコレを目指す背景や「福祉×オシャレ」で目指したい未来を、CCO(最高コミュニケーション責任者)の谷口藍さんに聞きました。

パリコレに出場して、障がいや福祉に対するイメージをプラスにしたい

 JPFA代表の平林景さんは小さい頃からオシャレが好きで、20代の時は美容師として働いていました。髪形を変えて自信を持てるようになったお客さんを見て、オシャレの楽しさや可能性に魅了されたといいます。しかし水仕事などで手荒れが悪化したため、25歳の時に美容師を辞めざるを得なくなりました。

 退職後は、美容専門学校の教員として働き始めます。教員をしている中で、発達障がいのある人と出会い、福祉に興味を持ったといいます。「障がいのある人も、通いたいと思える学校をつくりたい」と、2014年にデザイン性にこだわった個別学習塾「東京未来大学こどもみらい園」の立ち上げに、副園長として関わりました。

 JPFAを立ち上げたのは、知人から「パリコレのランウェイを車いすが通ったことはない」という話を聞いたことがきっかけでした。「ファッションの最高峰であるパリコレに車いすで出場すれば、障がいに対するイメージを変えられるのでは」と思いつきます。

 「平林の思いに共感した兵庫教育大学の准教授や障がい者に関わるボランティアをしている人たちが集まり、2019年にJPFAが設立されました。私自身、障がいのある子どもを持つ母親で、平林のことは以前から知っていたので、きっと面白いことをやってくれるだろうと思い、参加しました。

 ただ、パリコレ出場はあくまで手段として捉えています。JPFAは『ユニバーサルデザインをアップデートし、福祉業界や障がいのイメージを変える』という団体です。その共通認識を持った者が集まっています」(谷口藍さん)

JPFAの中心メンバー。左から副代表の小川修史さん、代表の平林景さん、CCOの谷口藍さん、CHOの山根寿豊さん。JPFAでは給与や役員報酬は発生しない。普段は大学の准教授や経営者など、他の仕事をしている人たちが集まっている
JPFAの中心メンバー。左から副代表の小川修史さん、代表の平林景さん、CCOの谷口藍さん、CHOの山根寿豊さん。JPFAでは給与や役員報酬は発生しない。普段は大学の准教授や経営者など、他の仕事をしている人たちが集まっている