2021年6月の株主総会を通して、上場企業各社が新役員体制を発表した。今年度のキーワードは女性登用だ。金融庁と東京証券取引所が6月、コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の改訂版を施行し、「多様性確保」を上場企業に求めている。D&I経営というグローバル基準にいち早く対応し、女性取締役が誕生している企業はどこか。
 日経xwoman編集部では、東証1部上場企業2191社の時価総額ランキング上位300社を対象に、女性取締役の人数や個人名を調査した。女性取締役比率、女性取締役ゼロ企業、株価や業績との関連などを分析しランキング形式で発表する。今回は「女性取締役比率ランキング」から、日本企業の女性育成の課題を読み解く。(文/日経xwoman編集委員・羽生祥子)

 東証1部の上場企業で時価総額上位300社といえば、知名度や従業員数などから社会的なインパクトを与える「大企業」であることは間違いない。その大企業で現在、どのくらい女性取締役が誕生しているだろうか? また、大企業の実態を捉えることで、日本企業の多様性確保への取り組みの参考になるのではないかと調査を始めた。

全取締役のうち、女性は12.6%にとどまる結果

 結果は、300社の中に取締役は合計3115人おり、そのうち、女性は394人だった。全取締役のうち12.6%という割合で、米国や欧州の30~40%と比べると、やはり圧倒的に少ない。ちなみに、従業員に占める女性比率は5割弱で先進国と同等であることは、金融庁もコーポレートガバナンス・コード(CGC)改訂の資料で指摘している。(参考記事・「金融庁が企業に、多様性確保の情報開示を求めはじめた」)つまり、会社の中には女性が男性と匹敵する人数はいるが、就いているポジションに大きく隔たりがある(役員や管理職に少ない)ことが問題なのだ。

 この現実に警鐘を鳴らし、新ルールを作ったのが金融庁と東京証券取引所だ。今年6月にコーポレートガバナンス・コードを改訂し、取締役や中核人材に多様性を確保せよと強く推奨している。多様性の中でも特に女性登用を催促した。催促にとどまらず、目標値・現状・人材育成の環境なども開示することを上場企業に強く求め始めたのだ。米国では上場廃止や投資先から外すなどのペナルティーも科しており、日本もそれに倣う形で投資環境を整備している。

 来春の新市場区分スタートに向けて機関投資家に組織の健全度をアピールできるか、それとも投資対象外となるか。今や重要指標の一つとなった女性登用について、日経xwoman編集部の独自調査で分かった上位ランキングを見ていこう。

女性取締役比率ランキング 1位ローソン、2位資生堂で35%超え

女性取締役比率ランキング
女性取締役比率ランキング
日経xwoman編集部の独自調査から分かった、女性取締役比率ランキング上位32社のリスト。1位はローソン、2位は資生堂、3位はソニーグループがランクインした
「女性取締役ランキング2021」上場企業300社調査
日経xwoman編集部では、東証1部上場企業2191社の時価総額ランキング上位300社を対象に、2021年7月6日時点での女性取締役(社内・社外含む。監査役は除く)の人数や個人名、就任日などを調査した。2021年7月6日時点で、有価証券報告書と各社ホームページで公開されている取締役の状況を参照し、最新のデータを使用した。また、過去との比較においては5年前の2016年を取り上げた。企業によっては決算日の都合上、最新のデータが2020年時点の場合もある。その場合は5年前の2015年時点の有価証券報告書掲載のデータを記載した。なお同率順位の場合、企業の表示順は時価総額の高い企業から表記している。

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 上位に37.5%の資生堂。この結果に「あぁ、また資生堂ね」と思った人もいるのではないだろうか。私自身も結果だけ見てそう感じた。しかし、結果だけでなく「中身」まで調べていくと、さすがは女性活躍のリーダーシップ企業としての本気度がうかがえる。