「女性社外取締役」は手っ取り早く多様性を確保する調整弁ではない
なぜこれほど女性社外取締役が多くなってしまうのか? その理由を考えてみた。来春以降、プライム市場に上場する企業は、コーポレートガバナンス・コードにより「取締役会の3分の1以上を独立した社外取締役で構成する」ことを求められている。取締役会に社外の目を入れよというお題目が、グローバル基準として課せられ始めたのだ。
と同時に、遅れに遅れている女性活躍推進も解決せねばならない。女性活躍推進法が2016年に施行されてから5年経つが、管理職を3割に増やしましょうという目標は、ご存じの通りで未達のまま。
この2つの宿題を一度に解決できてしまうのが、「女性社外取締役」だ。取締役会における多様性も、ボードメンバーにおける女性比率も、一気に解決できる便利な手段になってしまっている。いや、それ以外には現実的な手段がないというのが実相だ。
「社内から取締役に抜てきできる女性は残念ながら見当たらない。育成が追いついていない。来春、プライム市場へのシフトを死守するためにも、かろうじて女性の弁護士を1人社外取締役として雇っている」(1部上場企業の男性取締役)というのが本音だろう。
社外取頼みから卒業しなければ、数合わせでしかない
役員に3~4割の女性が既に入っている米国や欧州が、「社外の目を入れる」という高い経営理念を掲げるのは妥当だろう。しかし、管理職比率さえ3割未満の日本にとっては、社内の女性育成をおろそかにしたまま、女性社外取を確保することに終始してしまっては本末転倒だ。
ボードメンバーとなりうる女性社員を計画的に育成し、手放さぬようにしていかなければ、本来の目的であるはずの真の多様性組織にはなれない。社外取頼みから卒業できないということは、「数合わせの多様性」でしかない。このことを今、各社の経営陣こそ痛感しているのではないだろうか。
次回は「女性取締役ゼロ企業」を見ていきたい。
◆修正履歴:ローソンの女性取締役は2人ではなく、正しくは3人でした。本文や表など該当箇所を修正しました。お詫びして訂正いたします。(2021年8月26日)
文/羽生祥子(日経xwoman編集委員)、データ作成分析/内田久貴(日経xwoman編集部)
※この記事は、日経ビジネス電子版の特集「上場企業300社、女性取締役の実相は? 日経xwoman独自調査ランキング発表」を基に、加筆・編集したものです。