女性登用に関する数値や社内育成環境を開示するよう要求

 多様性の確保について「推進すべきである」という文言から、考え方・測定可能な目標・状況・人材育成方針・社内環境整備方針・実施状況を「開示すべきである」と、かなり踏み込んだ要求に変化した。つまり上場企業は今後、これらの項目を株主総会や統合報告書などで株主に向けて分かりやすく「見える化」させねばならない。来春の東証市場再編を前に、プライム市場銘柄(現1部)は22年4月以降の株主総会で開示すべきだとされている。スタンダード市場(現2部、ジャスダック)とグロース市場(現マザーズ)銘柄に至っては21年末までと期限が短い。のんびりしている時間はない。

「女性が輝く企業」と旗を振るだけではダメ

 今回、女性取締役ゼロ企業リストに挙がってしまった企業も、例外なく「多様性確保」という新たなコーポレートガバナンスの視点で投資家たちに診断されることとなる。診断の目は厳しい。社外取頼みの数合わせではなく、社内人材を男女の別なく育成し、その環境や目標値を開示せよというのだから。ダイバーシティ推進室を設置し、「女性が輝ける企業です」と旗を振るだけではごまかせない。企業にとって重要な経営指標は、利益や売上などの財務指標のみならず、“人財”という非財務指標も加わってくる。財務指標と並び、非財務指標に割く各社のリソース(資金も時間も)が問われる時代だ。

 次回は「女性活躍推進法」が施行された5年前(2016年)からの変化を見ていきたい。各社のD&Iに向かう姿勢が如実に浮かび上がる。

文/羽生祥子(日経xwoman編集委員) データ作成分析/内田久貴(日経xwoman)

※この記事は、日経ビジネス電子版の特集「上場企業300社、女性取締役の実相は? 日経xwoman独自調査ランキング発表」を基に、加筆・編集したものです。

【日経ウーマンエンパワーメントプロジェクト】
日本経済新聞社と日経BPは、2020年春に「日経ウーマンエンパワーメントプロジェクト(WEP)」を始動させ加盟企業と共に活動しています。ジェンダー平等経営は日本の組織の成長に不可欠との信念を持ち、ダイバーシティを実践している先進企業の事例や、第一人者たちのオピニオンを発信しています。さらに、大型イベントの開催、勉強会&ネットワーキング、国連機関のUN WOMENとの連携なども行っています。詳しくはこちらのサイトをご覧ください。