2021年6月の株主総会では数多くの女性取締役が誕生したが、「生え抜き」の女性が社内登用された例はわずかだ。そのうちの一人が、大日本印刷(以下、DNP)取締役の宮間三奈子さん。技術部門の部長や執行役員を経て、同社初の生え抜きの女性取締役に選任された。担当する人財開発・ダイバーシティ分野では、管理職研修の充実や「スポンサーシッププログラム」の導入など、さまざまな改革を打ち出す。「上層部に粘り強く情報を提供して、賛同者になってもらうことが大切」と語る宮間さんに、今後のビジョンを聞いた。
社員が専門性を高めるための研修を60以上用意
日経xwoman(以下、略) 宮間さんは2018年から執行役員として、社員の採用・研修などを手掛ける人財開発部とダイバーシティ推進室を率いてきました。2021年6月29日の株主総会で取締役に選任されましたが、自身に期待されている役割は何だと思いますか。
大日本印刷 取締役 宮間三奈子さん(以下、宮間) DNPが2020年6月に発表した中期経営計画では、「P&I(Printing & Information)イノベーションによる価値の創造」と、「成長を支える経営基盤の強化」という2つの基本方針を掲げました。この「経営基盤の強化」には、財務・非財務資本の充実が含まれます。私の役割は人的資本を強化することでDNPの成長を支え、新たな価値の創造に寄与することです。

宮間 人財開発という観点では、主に採用と研修を統括しています。DNPは2019年に、事業ポートフォリオと連動した人材ポートフォリオを作成しました。事業において求められる専門性やマネジメント能力を定義し、その過不足を見ながらスキルの高い人材を採用しています。また、研修においては、社員が「自立した個として専門性を高める」ことを目指し、研修メニューやプログラムを60以上用意しています。管理職や、管理職候補のための研修も増やしてきました。
高い建物に上ることで、より遠くの景色が見える
宮間 ダイバーシティについては、言わずもがなですが、一人ひとりの違いが強みである、という考え方に基づき、多様な人材の育成、多様な働き方の実現、多様な人材が活躍できる風土醸成を目指して取り組んでいます。
―― 担当分野は執行役員の頃と同じですが、取締役になって何が変わりましたか。
宮間 すべてのステークホルダーに対する責任を強く感じています。執行役員の頃も当然会社への貢献は意識していましたが、取締役となると、株主、地域社会、取引先、パートナー企業など、関わるべき人々がもっと広がります。
また、より長いスパンで物事を捉えるようになりました。5年後、10年後にもDNPが持続的に発展していくためには、どのような人事戦略が理想であり、正しいのか。高い建物に上ると、より遠くの景色が見えるように、以前よりも視座が高く、視野も広くなったと感じています。