2022年6月、東証プライム市場がスタートして初の定時株主総会が終了した。プライム市場上場企業は、高いガバナンス(企業統治)が求められ、取締役会の機能について厳しい原則が課せられている。コーポレートガバナンス・コードでは「取締役会は、ジェンダーや国際性、職歴、年齢の面を含む多様性と適正規模を両立させる形で構成されるべきである」と明記されている。
日経xwoman編集部では21年に続き、今年も女性取締役について独自調査を実施した。対象は、東証プライム市場上場企業1837社の時価総額ランキング上位500社。女性取締役の人数や個人名、生年月日、略歴などを調査分析した。この連載では、企業の女性取締役の比率・人数、女性取締役がいない「多様性ゼロ企業」、22年の昇格組や、人気の社外取締役についてリポートする。
今回は、22年の「女性取締役比率ランキング」から企業の女性活躍に対する取り組みを俯瞰(ふかん)する。
(文/日経xwoman・内田久貴)
東京証券取引所は22年4月に最上位の市場を「東証1部」から「プライム」に再編し、約8割強の企業がプライムに移行した。上場基準を厳格化することで、市場の新陳代謝を促し、ひいては海外投資家からの投資の呼び水とする狙いだ。
プライム市場で重視される上場基準の1つが、取締役や中核人材の「多様性」の確保。女性登用が進まない企業に対しては、投資家からの要求も厳しくなるだろう。
そこで日経xwoman編集部では、知名度、従業員数ともに日本を代表する大企業がそろう、プライム市場時価総額上位500社に注目して、女性取締役の登用状況を調査した。今回は、昨年、東証1部上場企業上位300社を対象に実施した調査を拡大。より広く、深く課題を洗い出す。
取締役の14.5%が女性。「30年30%」も実現可能?
プライム上場企業500社に取締役は合計5109人。そのうち女性は741人で、全取締役の14.5%に相当する。現時点で、欧米並みの30~40%には遠く及ばないものの、日本経済団体連合会(経団連)が掲げる「2030年までに役員に占める女性比率を30%以上にする」との目標には、少しずつ近づいてはいる。
下図を見てほしい。これは昨年、21年7月に調査した東証1部上場企業の時価総額上位300社のデータと、22年7月のプライム市場上位300社のデータを比較したものだ。市場の再編により、ランクインしている企業の変動は多少あるものの、上位の顔ぶれは大きく変わってはいない。
上位300社の比較では、女性取締役の人数は1年間で89人、2割以上増えた。一方で、男性取締役の数は43人減ったため、取締役会における女性取締役の比率は12.6%から15.3%に、2.7ポイントも上昇した。この高い上昇率を維持できれば、目標とする2030年を待たずに、女性取締役比率30%超えは可能だ。
この結果からは、大手企業がプライム市場で生き残るため、取締役会における女性比率を重視し、女性登用に本腰を入れ始めたといえるだろう。
それでは実際に、女性取締役比率が高い企業はどこなのか。22年7月時点の最新ランキングをまとめた。
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