2022年6月、東証プライム市場がスタートして初の定時株主総会が終了した。プライム市場上場企業は、高いガバナンス(企業統治)が求められ、取締役会の機能について厳しい原則が課せられている。コーポレートガバナンス・コードでは「取締役会は、ジェンダーや国際性、職歴、年齢の面を含む多様性と適正規模を両立させる形で構成されるべきである」と明記されている。
日経xwoman編集部では21年に続き、今年も女性取締役について独自調査を実施した。対象は、東証プライム市場上場企業1837社の時価総額ランキング上位500社。女性取締役の人数や個人名、生年月日、略歴などを調査分析した。この連載では、企業の女性取締役の比率・人数、女性取締役がいない「多様性ゼロ企業」、22年の昇格組や、人気の社外取締役についてリポートする。
今回は、急増している女性社外取締役の顔ぶれに注目する。
(文/日経xwoman・内田久貴)
女性社外取締役の存在感が急速に高まっている。昨年の調査で女性取締役が1人もいなかった“多様性ゼロ企業”は調査対象300社中43社あったが、その約半数は今年、社外取締役に女性を起用してゼロ企業から脱却した(「女性取締役不在の「多様性ゼロ」プライム企業は」)。社内で女性取締役の育成が追いついていない企業が、手っ取り早く女性比率を上げるために、社外取締役を採用する傾向にある。
プライム企業の71.1%に女性社外取締役が在籍
企業統治助言会社プロネッドの調査によると、東証プライム上場企業1829社(*)のうち、女性社外取締役選任企業の数は1301社に上る。比率は71.1%で、前年と比べて、なんと18.5ポイントとかつてない伸びを示した。「企業間で女性社外取締役の奪い合いが起きている状態」(プロネッド酒井功社長)という。
今回、日経xwomanが調査したプライム企業の時価総額ランキング上位500社には、女性の社外取締役が664人。女性取締役の総数の約9割を占める(「女性取締役の実像 平均59歳、22年昇格組は19人」)。女性社外取締役の需要過多、供給不足を反映して、この中には2社以上を兼務する人が119人もいる。最も多い4社掛け持ちが8人、続いて3社が21人、2社が90人という内訳だ。
能力を高く評価された女性が、社外取締役として引っ張りだこになるのは当然だろう。しかし、日本を代表するプライム企業の時価総額ランキング上位500社のうち3~4社の社外取締役を掛け持ちするのは大変だ。
企業の意思決定における最高機関である取締役会に定期的に参加して経営に関する適切な助言をし、 時に株主の視点を持って経営を監視し、また企業統治を強化する役割も果たさなければならない。あるプライム企業の女性社外取締役によると、「一般に、毎月開催される取締役会(会社法上は3カ月に1回以上開催)に加えて、月に数回は出社しなければ職務を果たせない。複数社兼務はかなり大変だと思う」という。
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