寒い寒い、と言っているうちに2月が終わってしまいました。ここ3年ほど「暖かい2月」が続いていたので、2月の気温が平年より低くなるのは2018年以来4年ぶりのことです。2月の終わりになってようやく寒さのトンネルから脱出。気象庁の季節区分でも3~5月が春なので、今月からは文字通り暖かな春を期待している人も多いでしょう。春の暖かさを待っていたのは植物も一緒です。今月はどんどん芽吹きや開花が進みそうです。気象予報士・伊藤みゆきさんが、春を彩る桜と「標本木」について解説します。

早咲きのオカメザクラ。東京日本橋の春を彩っている。去年は2月が暖かかったので、桜の開花が早かった。2021年2月27日撮影
早咲きのオカメザクラ。東京日本橋の春を彩っている。去年は2月が暖かかったので、桜の開花が早かった。2021年2月27日撮影

 すでに早咲きの桜が東京の街を彩り始めています。民間気象会社の予想では、ソメイヨシノは3月中に九州から関東付近で開花するとみられています。「桜が咲きました」と発表されるのはそれぞれの気象台が観測対象にしている標本木の花が5~6輪開いたときです。標本木は気象台の構内だったり、近くの桜並木だったりさまざまです。

 東京は靖国神社の中に標本木があります。気象予報士の試験に合格してまもない1997年冬、標本木を探すために靖国神社に行きました。一本一本見て歩きましたが目印はなく、どれが標本木かわかりませんでした。数年たった春、ちょうど観測に来ていた気象庁の人にお会いして尋ねると、「木を傷めてしまう恐れがあるので、わからないようにしているんですよ」と教えてくれました。私も「みんなにわからないようにコッソリ確認しよう」と使命感を持ってひそかに標本木を見守ってきました。

 ところが、次第に「桜の開花を確認する瞬間」がテレビで中継されたり、新聞の1面を飾るようになったりしたことで、2000年代半ばになると遠目からでも「あれが標本木か」とわかるようになってしまいました。まだ冬枯れ状態の木々の中、一本だけ人だかりができているからです。そのうち標本木の幹の周りに囲いが登場、看板も立てられました。以下では、写真で標本木の周りの囲いがどのように変化したのかを見てましょう。