5月といえば、一年で最も陽気が良くて過ごしやすいという印象を持つ人も多いでしょう。「五月晴れ」という言葉もあるように、晴れた日は若葉越しに広がる青空にすがすがしさを覚えますね。でも、沖縄は5月4日に平年より6日早く、続いて奄美地方も11日に梅雨に入りました。去年は5月半ばまでに九州・中国・四国も梅雨入りしたなど、雨の季節も近づいてきます。気象予報士・伊藤みゆきさんが、曇りや雨の日でも、気分をちょっと晴れやかにしてくれる花を紹介します。
5月は若葉が日ごとに濃くなり、ツツジやサツキなどの鮮やかなピンク色が都心を彩っています。同時にハナミズキやヤマボウシなどの白も新緑に映えます。「新緑・白・青空」はすがすがしさナンバーワンの組み合わせではないでしょうか。
ナンジャモンジャの木、シロツメクサ、クチナシなどこの時期に咲く白い花は種類が多いです。そんな清涼感のある白い花の中で、「厄介」という印象を持たれがちなのがドクダミです。
とはいっても、実はドクダミの花は白くはありません。花は中央の黄色い筒状の部分(花序)で、白い花びらに見える部分は「総苞(そうほう)」です。ハナミズキやヤマボウシも同様に、厳密には白い花グループには入らないので、放送では「白い花びらのように見える部分」としています。
もう一点お断りを。ドクダミは古くから薬やお茶としても用いられ、番組にも「厄介者と呼ばないでください」とのお便りが届いたこともありますが、今回は「抜いても生えてくる」繁殖力の強さから、草取りなどでの「厄介さ」を優先させていただきます。
ドクダミの多くは4枚の白い花びらが十字型に開いているように見えます。ところが、まれに「花びら5枚」に見えるものがあり、「ラッキードクダミ」と命名しました。これは先輩予報士のコラムからヒントを得ました。
今から20年くらい前、北海道出身の先輩予報士が新聞の天気欄コラムにライラックのことを記しました。「札幌ではライラックまつりが始まった。多くは花びらが4枚に分かれているように見える中、5枚になっているものを地元ではラッキーライラックと呼んでいる」というような内容です。まだ新人だった私は、そのコラムに憧れ「いつか札幌でラッキーライラックを見つけたい」という夢を持ちました(その夢は2019年にかないました)。
東京では札幌ほどライラックが身近な花ではありませんが、同じように花びら4枚に見えるドクダミは至る所で見かけます。これがライラックだったらな……と5枚に見えるものがないか目で追っていたら、見つけたのです。このときの「ラッキー」感は、まさに四つ葉を見つけた時と一緒! ラッキードクダミだ! と名付け、先輩予報士の話も添えた上でラジオやブログで紹介し始めました。
札幌では祭りも開催される美しいライラックから、雑草のドクダミへと派生したラッキーストーリーですが、インスタやTwitterにも載せているうちに、ラジオのリスナーさんや投稿を見た人も「ラッキードクダミ」として写真を載せてくれるようになりました。特にここ5年くらいはひそかに盛り上がっています。
まさに草の根活動です。番組には「毎年草刈りが嫌いでしたが、ラッキードクダミを探しているうちに少し楽しくなりました」「散歩の途中で2つ見つけ、明るい気持ちになりました」「5枚どころか6枚のものを見つけました」など小さな喜びを知らせてくれるお便りも届きます。
これから曇りや雨の日が増えて気分が上がらない時、小さな発見でちょっと気持ちが晴れることもある……という一例になったら幸いです。さて、ドクダミやハナミズキは白い花びらのように見える部分が花ではないと記しましたが、梅雨を代表する花、アジサイも同様です。
ではここでクイズです。気象庁では桜・梅・アジサイの開花を観測しています。桜と梅は遠目からでも「咲いた」と分かりますが、アジサイが「咲く」とはどういう状況でしょう? 多くの人が「紫やピンク、青などに色づいた時」と誤解しているようです。