超難関試験は試験の仕組みも複雑

 ちなみに2021年1月に行われた第55回の合格率は5.6%。

 男性2037人・女性579人の計2616人が受験し、合格したのは146人(女性29人)。年齢別の内訳は、19歳以下は11人、20代が最も多い63人、次いで30代の34人、40代は15人、50代は17人、60歳以上が6人となっています。

 実は、第55回までの合格者総数1万1325人に対して7月1日時点の気象予報士は1万979人……300人強は狭き第一関門をクリアしたにもかかわらず、気象庁長官の任命を受ける(気象庁に申請する)第二関門をくぐっていないというのですね。少し気になりますが、何か事情があったのかもしれません。

 さて、ここで、気象予報士試験について詳しく紹介してみます。興味がある方は読んでみてくださいね。試験は、マークシート式と記述式の2段階で行われます(過去10回分の問題と解答例は気象業務支援センターのホームページで見ることができます)。

 記述式は「実技試験」という分野で、過去の気象現象について資料を基に解答していきます。実技といっても気象キャスターのように立って天気図の解説をするのではなく、実際の天気について書いて答える試験です。

 例えば、九州北部で大雨が降った日の実際のレーダー画面や予測資料など10枚前後の図とともに、強雨の時間帯や低気圧の位置、気温の変化などを問われます。

 実技試験の前に立ちはだかるのがマークシート式の「学科試験」で、これは予報に関する一般的な知識「一般」と専門的な知識「専門」の2つに分かれています。

 「一般」は気象業務法や地球の自転、雲の発生過程など多岐にわたります。高校の地学や物理、数学の知識なども関わってきます。

 「専門」は気象観測や予報の仕組みや精度評価など、予報の現場で使う内容が多く含まれ、「一般」「専門」は別々に合否が発表されます。

 学科の合格分野はその後2回まで受験免除となりますが、両方同時に合格していないと、午後の実技試験の合否判断対象になりません。

 例えば「専門」だけ合格した場合、次かその次で「一般」の合格を目指し、合格がそろったタイミングで記述式の「実技」も受からなければならない……というのが厄介で、免除期限が過ぎてしまうとまた最初からになってしまいます。

 この試験の仕組みを読んでも「?」、問題を見るとさらに「???」と思う人が多いと思います。私もそうでした。

 私は大学時代に文系の学部に進んだので、理数系の科目を勉強したのは高校1年生まで。社会人3年目で初めて気象予報士の受験を試みたとき、「サイン・コサイン・タンジェントなんてもう一生出会うこともない」と思っていた高校時代の自分に、「10年後に再会して苦しむことになるよ」と教えてあげたくなりました。日本語で書いてあるはずのテキストが、外国語並みにチンプンカンプンだったのです。

最年長合格者は74歳 「普通の人」にもチャンスが

 このレベルでも希望を持てたのは、合格ガイドブックに書かれていた「普通の人でも受かることがある」という一言でした。当時20代半ばで証券会社に勤務していた私は「それなら自分も頑張れば…」と勇気が湧いたのです。

 気象予報士の受験には年齢制限がありません。

 これまでの合格者の最年長は74歳10カ月(当時)、最年少は11歳11カ月(当時)の小学6年生。小学校5年生から勉強を始めたそうです。

 「普通の人枠」を狙った私は、中高生向けの参考書を買い、辞書を引いてテキストを読み解くところからスタート。10年分の遅れを一気に挽回して理数系の人と同じ土俵に上がるために、ある作戦を企てました。

 それは「知っているふう」の解答をすることです。

気象予報士 勉強ノート
「当時は文系の自分が数式を解読できるように、黒いノートに白やオレンジのペンを使ってカラフルに楽しくまとめていました」

 例えば野球の展開を見て「6.4.3のダブルプレーだ」と言えば、ある程度、野球を知っている人という雰囲気が出ると思います。これを気象予報士に当てはめて、「この用語を使えば採点者に好感触では?」というキーワードをまとめたり、ここ1~2年の気象災害を調べて「台風が来た日」「大雨が降った日」「曇って寒かった日」などに分類して日付と内容を暗記したりしました。後にこの勉強法は大正解だと言われて驚いたものです。

 さらに、文房具もお気に入りの物を使うようにして気分を上げました。さまざまなノートやペンでポイントをまとめ、目に焼き付けていきました。