朝のラジオ番組で気象情報を伝えている気象予報士の伊藤みゆきさん。真っ青な夏空に大きな入道雲、街路樹の紅葉――そうした季節の変わり目を感じられる新連載「季節の彩りパトロール」が始まります。連載では気象予報士ならではの視点で「季節の言葉」についても解説してもらいます。

第1回は朝ドラ「おかえりモネ」のストーリーに登場して話題になった「気象予報士」についてです。

超難関資格である気象予報士しかできない仕事とは?

 皆さん、初めまして。気象予報士の伊藤みゆきです。

 「あっという間に桜が咲いてしまった」「そういえば駅前の街路樹がすっかり茂っていた」など、身近な風景や日差しの強さ、風の涼しさ、冷たさはいつの間にか変化しています。

 その変わり目をキャッチしてみよう! と、この「季節の彩りパトロール」を連載することになりました。

 私が担当している朝のラジオ番組の気象情報では、花の開花やセミの声など季節の話題も添えています。

 すると、全国各地のリスナーさんから「うちのほうではまだ咲いていない」「ここではもう別のセミが鳴いている」など、多くのレスポンスが寄せられ、南北にも東西にも長い日本列島の季節感を共有できるようになりました。

 コロナ禍で遠出できない分、ご近所での小さな発見も大切だなあと実感しています。

 さて、今年は春先から気象予報士・気象キャスター界がちょっとザワついていました。

 NHKの朝ドラ「おかえりモネ」のヒロインが気象予報士になるストーリーだったからです。ドラマがスタートした朝は、私のTwitterのタイムラインが各局の気象キャスターのつぶやきで埋まっていたほどでした。

 7月に入ると、職場でも「気象予報士ってなるのが大変なんだね」「合格率5%なんだってね」と改めて労わられるようになり、気象予報士に興味を持つ人が増えたように感じます。

 連載第1回の今回は、この気象予報士について、私の経験も含めてお伝えします。

 まず、気象予報士は国家資格です。

 気象業務法が1993年5月に改正され、気象庁以外にも気象庁長官から許可された者が一般向けに天気予報を発表できるようになりました。この際、予報の基となる資料やデータを適切に扱い、防災面も的確に配慮できる人を確保する目的で「気象予報士制度」が導入されたのです。天気予報は、穏やかなときは「傘が要るか」「暑いか寒いか」が主ですが、ひとたび災害となると生命や財産を守る重要な情報でもあるからです。

 突然ですが、ここで問題です。

気象予報士にしかできないことは、以下の3つのうちどれでしょうか?
(1)野球場向けの天気を予測すること
(2)お天気キャスターとしてテレビに出ること
(3)テレビで台風の進路を予想して発表すること

 答えは(1)です。

 質問すると、多くの人が(3)と答えますが、(2)は予報士でなくても可、(3)は予報士でも不可なんです。

 というのも一般向け(テレビやインターネットで不特定多数に発表する)予報の場合、台風に関しては気象庁の台風情報の範囲内にとどめ、独自の予報などを提供することはできないという気象業務法があるからです。そのため台風の進路予想に関しては、どのテレビ局の天気予報を見ても同じ内容になっているはずです。雨か雪かなどは独自色が出せるので、「あの局は雨って言ってたけど、この局は雪だって」となる場合があります。

 気象予報士と名乗るためには、気象予報士試験に合格した上で、気象庁長官の任命を受けるという2つのステップが必要です。

気象予報士 合格掲示板
「受験免除の最後のチャンスだった1997年10月、合否の郵便を待つより行ってみようと気象庁へ。当時は気象庁構内に合格者一覧が掲示されていました。平仮名の名前が目立って近づく前から結果が見えてしまいました……」(伊藤さん撮影)

 気象予報士試験の初回は1994年8月28日に行われました。2777人受験して合格者は500人、合格率は18%でした。

 近年は毎年1月と8月の第4日曜日に試験が行われ、過去55回で、のべ20万4552人が受験し1万1325人が合格しています。56回目の今年は7月22日に行われました。

 トータルの合格率は5.5%で、最も合格率が低かったのが第12回・39回・41回・44回の4.0%。朝ドラのヒロインが3度目の受験で合格したとされる2016年1月(第45回)の合格率は4.5%でした。