晩秋なのに春とは? 「小春日和」

 気象情報に登場する言葉で時期を間違われやすいものの一つに「小春日和」があります。

 「小さい春」と書くことから、「立春」を過ぎた2月から3月ごろの「ちょっと春の暖かさを感じられる晴れた日」と思われがちです。ところが、実は春には程遠い、この時期の言葉です。小春は旧暦10月の異称で、「晩秋から初冬にかけて、いったん寒さを感じた後に来る穏やかな晴れの日」を指します。

 ちなみに米国ではこの時期に現れる穏やかで暖かい晴天を「インディアンサマー」と呼びます。秋や冬ではなく夏(サマー)を使っているのも、小春日和に通じますね。

 さて、今年の旧暦10月1日は11月5日、この記事が公開される翌日から小春日和が天気予報にしばしば登場することでしょう。小春日和になる気圧配置は、移動性高気圧が日本付近にやってくるときで、広い範囲で晴れて風も穏やか、日差しのぬくもりを味わえて外出や洗濯などに絶好です。

小春日和の天気図。高気圧が移動してきて日本付近を覆うと、広く秋晴れに
小春日和の天気図。高気圧が移動してきて日本付近を覆うと、広く秋晴れに

 小春日和の前は低気圧や前線の通過で雨や風が強まり荒れた天気になることがあります。関東など太平洋側では冷たい空っ風、北陸など日本海側は時雨、北海道では降雪など「冬を思わせる寒さ」を伴います。その分、翌日以降の穏やかな晴れ「小春日和」でホッとひと息つけるのです。

 ただ、ホッとしつつも気を引き締めておきたいのが「日中と夜間の寒暖差」です。晩秋は日の出が遅く、日暮れが早くなるため、暖かい日差しを味わえる時間がどんどん短くなっていきます。逆に夜間に地面の熱が上空に逃げる時間は長くなり、朝の冷え込みが強まっていきます(放射冷却現象)。

 これは、風が穏やかな晴天時(=小春日和の気圧配置の時)が顕著です。昼間の日差しが一段と暖かく感じ、夜は空気の冷たさが極まる……となるので、寝冷えや風邪ひきに要注意です。

 一方、そんな小春日和の朝に遭遇するチャンスがあるのが「雲海」です。放射冷却が強まって気温が大きく下がると、盆地では霧が発生しやすくなります。小高い所からは雲の海が広がっているように見えることから観光資源にもなっています。

ハワイ・オアフ島で撮った「滝雲」。盆地にたまっていた霧が、山の稜線(りょうせん)を越えると雲の滝のように見えることから呼ばれる「雲海の発展形」。日本にも名所がいくつかあるが、旅先のハワイで初見。豊富な水蒸気+朝の冷え込み+霧をせき止める稜線という条件がそろうと見られる
ハワイ・オアフ島で撮った「滝雲」。盆地にたまっていた霧が、山の稜線(りょうせん)を越えると雲の滝のように見えることから呼ばれる「雲海の発展形」。日本にも名所がいくつかあるが、旅先のハワイで初見。豊富な水蒸気+朝の冷え込み+霧をせき止める稜線という条件がそろうと見られる

 この「小春」の期間は12月初めまで。その後は冬本番です。9月下旬に発表された冬の予報では「暖冬ではない」との傾向でしたが、最新の冬の予報は11月下旬に更新されます。興味のある人は気象庁のホームページを見てくださいね。

文・写真/伊藤みゆき 図版/気象庁 提供