三日月は秋の季語ですが、冬三日月は冬になってキリっと冷たい空気の中で輝く三日月を指す言葉です。
私が朝のラジオ番組を担当して、詳しくなったことの一つが「月」です。それまでは細い月をすべて「三日月」と呼んでいました。イメージとしては満月~半月(下弦・上弦の月)~三日月~新月という4分類です。何度か「今、三日月が見えています」と放送しては、「それは三日月ではない」とリスナーから指摘が入り、月齢や位置を覚えていきました。
三日月は「旧暦3日に出る月」。
12月は6日が旧暦11月3日ですので、この日に見えるのが三日月となります。晴れていれば、日没ごろの西の空にその姿を見ることができます。
旧暦3日の三日月は必ず夕方に西の空に見える月。明け方の東の空に見える月は旧暦26~28日ごろの月。新月を挟み、時間・方角・月の向き(弧の形)も逆になります。
リスナーから「今、三日月がキレイです」というお便りが届き、それをそのまま読むと「違います」と別のリスナーからお便りが届くので、「三日月は夕方の西の空に見えるもので……」と説明することが、毎月のようにくり返されていました。私も1カ月たつとうっかり忘れてしまい、「先月もこの流れだったね」と反省するところまでが1セットになっている状態でした。
それならばいっそ、呼び名を付けたらいいのでは? と思い、「鏡三日月」と呼ぶことにしました。三日月を鏡に映した形だからです。長く聴いてくださる方々には「早朝に見える細い月は三日月ではない」と浸透してきました。鏡三日月は私の造語ですが、三日月と区別するには便利です。
「そんなのどっちでもいいじゃない」と思われるかもしれませんが、一度覚えると、空を見る楽しみが増えます。日時によって表情を変えるお月さまに、いにしえの時代から名前を付けて親しんできた気持ちが分かってきました。月日の流れの早さも実感できます。「この前、三日月を見てから、もう1カ月か」などと焦ることが多いのですが。(笑)
12月10日にかけては三日月が半月に近づいて太りながら、日ごとに金星・土星・木星と寄り添う惑星を変えていきます。
風が冷たくなるたそがれ時、月と濃紺の空のグラデーションが美しく、織りなされます。ぜひ、冬の月を見上げてみてください。
文/伊藤みゆき 写真・図/写真は伊藤さん提供、図は気象庁より