順風満帆だった人、山あり谷ありの人、逆風にあおられて苦しかった人──2021年は皆さんにとってどんな年だったでしょうか。共通なのは「新型コロナウイルス禍」という試練があったこと、そして「ウィズコロナ」に踏み出して進んで行かなければならないこと。そんな世相を「今年の漢字」と「流行語大賞」は反映しているのでしょうか。そこから見え隠れする釈然としない空気をコラムニストの河崎環さんがしたためました。

 世界が疫病に襲われたコロナイヤー満2年となる2021年末、日本では1年の世相を表す「今年の漢字」に「金」が選ばれた。輝くゴールドだ!

 だけどこれ、1995年に京都・清水寺で日本漢字能力検定協会による「今年の漢字」発表が始まって以来、2000年、2012年、2016年に続く、4度目の「金」。

 「またオリンピックだったから『金』なの? 単純……」

 と、いまひとつ自分の実感にしっくりこないとがっかりする人も少なくはなく、ある読者調査では納得いかないと答える人が9割近くになり大ブーイングとなった。だが、これはあくまでも一般からの投票によって選ばれるもの。

 東京五輪の「金メダル」にかけているのはもちろんだろうけれど、コロナ感染拡大のさまざまな制限下で人々が苦しんだ経済不安、それを補償する「給付金」をめぐる物議など、投票者が「金」に込めた思いは、一見したよりもずっと複雑そうだ。

 もしかするとそれは、「きん」というより「カネ」、「ゴールド」というより「マネー」。2021年末、ピカピカ豪華に輝くメダルのイメージで「金」の一字をぶら下げられても、世間の実感は決してポジティブな気分についていってはいないのである。

「金」の一字をぶら下げられても…
「金」の一字をぶら下げられても…

 こんなモヤモヤした年の瀬、私たちは何を心に留めて次へと歩みを進めればいいのだろう?