20~30代の若手社員が夜な夜な集い、銀行をよりよくするために話し合うという習慣から始まった三井住友銀行(SMBC)の若手有志団体「SMBB~Beyond Banker~」。「B」にはBeyond(超える)、Breakthrough(突破する)、Bridge(架け橋になる)など、さまざまな意味が込められている。「銀行員を再定義する」という目標を掲げながら活動するSMBBについて、団体を立ち上げた杉本秀和さんとメンバーの松村憲治さん、SMBBとともに活動するSMBCコンシューマーファイナンスの有志団体を立ち上げた呉藤舞さんに聞いた。
自分の意思を発信する場所が必要と確信
SMBBを立ち上げた杉本秀和さん。発足を思い立ったきっかけは、彼の「苦しんだ期間」にある。2010年にSMBCに入行してからの8年間、法人営業部や小売業界担当として営業や戦略提案を担当してきた。業界トップの企業と仕事を進める面白さを感じていたという。
そんななか、18年に本店営業部への異動が決まった。本店営業部で働くのは新鮮であり、業務自体は挑戦のしがいがあったという。ただ、杉本さんは同部へ最末席に近い立場として異動し、「自分の思い」をなかなか発信できない日々が続いた。
「金融以外のアプローチで顧客の課題は解決できるのではないか」「もっと銀行の中で新しいチャレンジをすれば可能性が広がるのではないか」と思っても、勇気を出して発信することができずにいた。「自分は誰かの役に立つことができないのでは」とまで思い詰めるようになった。
そんな折、19年にSMBCグループのオープンイノベーション拠点「hoops link tokyo」を所管する部署が主催した、SMBCグループ従業員向けのイベントに参加した。大企業の中で自らの思いを発信し、新規事業を立ち上げるなど、今をときめく他社の人の話を聞いて「銀行員でも金融の枠を超えて、いろいろなことにチャレンジしていけそうだ!」と杉本さんは感化された。
何ができるのか。まず、自分と同じように「現状を変えたい」と感じている20~30代の同世代10人を集め、銀行をよりよくするためにどうすべきかを定期的に話し合う場をつくった。そこからは、「有志チーム」として社内SNS導入の企画を提言し、全従業員が自分の意見を発信できる環境も生まれた。意思を持った従業員が発信できるような場所がないと問題意識を持っていたからだ。
そして、20年5月。杉本さんに転機が訪れる。新しく立ち上がった社内ベンチャーの社長を招き、SMBCグループにとっての「非金融領域へのチャレンジ」について考えたり、議論したりする有志オンラインイベント(勉強会)を企画したところ、若手から役員までなんと650人が参加したのだ。これまでの地道な活動や草の根の集客活動の結果だ。イベントも大成功に終わり杉本さんは確信した。
「自分の意思を発信する場所は絶対に必要だ」。正式に有志団体「SMBB」を結成した。
