1年間の非公式な活動から始まった、電通の若手有志団体、電通若者研究部(ワカモン)。新しい価値観をいち早く捉えることをミッションに掲げ、27人のメンバーが「若者の専門家」として数多くのプロジェクトを手掛ける。ワカモンを立ち上げた西井美保子さんとメンバーの古橋正康さん、山口志歩さんに話を聞いた。

フェルミ推定を用いて、団体結成の意義を訴えた

 ワカモンが結成されたのは、2010年。09年に入社し、消費者の行動などを研究する部署に配属された西井美保子さんは、少子高齢化社会でシニア層のマーケットが大きく注目され始めたことに、ある思いを抱えていた。

 「シニア層は人口が多い層で、さまざまな業界が注目しマーケットを広げていくことは重要だと思います。とはいえ、社会の新しい価値観をいち早く掘り起こすためには、若者の消費行動などに着目すべきなのではないか、という思いがありました」

 そこで、若者の消費行動に特化した研究チームをつくりたいと、当時の部長に相談した。しかし、「なぜする必要があるのか。1年目はまず自分の業務に慣れることに専念してほしい」と、提案は通らなかった。

 諦められずにいた西井さんは翌年に、再び部長に提案。チームをつくることが、どれだけ会社の業績に意味のあることかをフェルミ推定(正確に把握することが難しい数値を論理的に概算したもの)を出し訴えた。前回と比べてより論理的に説明できたことで提案は通り、10年12月に有志団体が正式に結成された。

 「ワカモン」は電通若者研究部の通称。元は、非公式に始まった電通若者問題研究所の名称を略したものだったが、「『最近の若者は…』とモンスターのように言われることもある『若者』を愛着ある存在にしていきたい」(西井さん)と、正式団体として名称が変わった後も、ワカモンの通称を残した。ワカモンは名前の通り、高校生と大学生を対象とした若者の視点や思考を研究し、よりよい未来をつくるためのヒントを探る団体である。これまで官公庁との共同研究のほかに、学生を対象としたお笑いコンテストや、大学サークル向けのアプリの開発など、イベント開催や事業立ち上げなど多岐にわたる活動をしてきた。

団体発起人の西井美保子さん
団体発起人の西井美保子さん