理解が得られず苦労することも

 AGseedが今、最も力を入れているのは風土改革だ。年に1回、経営層とコミュケーションするイベント「TOPコミュニケーション」があるが、それだけだと変わらないと北野さんは感じた。2019年、さらに踏み込んで経営層と若手が力を合わせて会社を良くしていきたいという思いから、鎌倉でTOP(経営層)と50人ほどの社員の夏合宿を企画。会社の各部門・職種から幅広いメンバーを集め、合宿では、2030年のAGCがどうありたいかを経営層とともに議論した。

2019年に鎌倉にて行われた夏合宿。若手・中堅社員50人が参加し、会社をよくするために議論した(写真/AGseed提供)
2019年に鎌倉にて行われた夏合宿。若手・中堅社員50人が参加し、会社をよくするために議論した(写真/AGseed提供)

 これまで多くの活動をしてきたAGseedだが、団体に所属しない社員に、団体の意義について伝える難しさを感じているという。しかし、「会社を本気で良くしたい」ということをしっかり話せば分かってもらえることが多く、くじけず「伝える」ことを大切にしている。実際に、今は若手だけではなく、中堅層による支援も増え、徐々に活動の幅が広がっていると感じているそうだ。

 「AGseedは、若手だけで成り立っていません。活動を応援やフォローしてくれる中堅層や経営層ありきの団体なんです。若手が活動していることを知ってくれた上で『いいよ、やったらいいじゃん』と企画を通してくれたり、見守ってくれたり、応援してくれたりする中堅層や経営層が一定数以上います」(北野さん)

今後はサポート側としてさらに若い社員を応援したい

 団体の今後の展望として、3人は共通の思いを持つ。それは「次の世代に引き継ぐ」こと。

 「AGseed内でいろいろな活動をしているメンバーで集まって、今後の有志活動のあり方を定期的に議論しているんですね。これまでは若手中心でやっていた活動なのですが、実際に社内を変えようとすると、若手だけではなく、いろいろな人の助けが必要になってくると気づきました。そういう人の力をどう借りるか、どう巻き込んでいくのかを今後考えていかなければいけません。

 一方で、若手社員の中には目上の人がいると萎縮してしまう人もいます。ですから、心理的安全性をうまく保ちつつ、組織形態をどう整えていくかを議論しているところです。今後は、さまざまな役割や立場の人から新しい活動が生まれるプラットフォームになればいいのかなと思います。それをより若い社員に引き継いでもらい、彼らが活動しやすいように、支援していけたらと思います」(青木さん)

 今後団体を引っ張ることになる若手を、それぞれができることからしっかりサポートしていきたいと3人は意気込んでいる。

取材・文/福井麻乃(日経xwoman) 写真/窪徳健作