やせ体質を導く! 腸内で生まれる次世代スーパー物質

 「バクテロイデス門の菌は“やせ菌”とも呼ばれており、食べたものを代謝するときに『タンサ(短鎖)脂肪酸』を産生します。このタンサ(短鎖)脂肪酸に、体脂肪の蓄積を抑える、基礎代謝を高める、食欲を抑え、インスリンの分泌を促進する、といった作用があることが、私たちの研究で明らかになっています」(木村さん)

 太りにくい体を目指すうえで、ぜひ味方につけたいスーパー物質といえるだろう。

●タンサ(短鎖)脂肪酸、3つの働き●

 肥満は脂肪細胞に余分な栄養が取り込まれ、細胞が肥大化することで起こるもの。タンサ(短鎖)脂肪酸には、脂肪細胞のセンサー(受容体のGPR43)に働きかけ、脂肪細胞への栄養の取り込みを阻止する作用が。過剰な脂肪をためこみにくくなり、生活習慣病の要因となる体脂肪蓄積の抑制にもつながると考えられる。ただし、もちろん食べ過ぎや脂質、糖質のとり過ぎには気をつけて。

 自律神経の交感神経にはタンサ(短鎖)脂肪酸に反応するセンサー(受容体のGPR41)があり、タンサ(短鎖)脂肪酸を感知することで情報伝達物質ノルアドレナリンの分泌が促進。交感神経の活動が活発になり、心拍や体温が上昇。結果、エネルギー消費が高まる。年齢とともに低下していく基礎代謝がアップすることで、太りにくい体をキープしやすくなることが期待できる。

 タンサ(短鎖)脂肪酸は、腸管のL細胞から分泌されるホルモンを刺激。そのひとつで“やせホルモン”とも呼ばれる「GLP-1」は食事中から食後にかけて多く分泌され、膵臓(すいぞう)のインスリンの分泌を促進。食後の急激な血糖値の上昇を抑える。また、食欲抑制ホルモン「ペプチドYY(PYY)」の分泌を促す作用も。満腹感が持続しやすくなり、食べ過ぎによる肥満予防に期待大

 ダイエットだけでなく、血糖値をコントロールするインスリンの分泌が促されることで、代表的な生活習慣病のひとつである糖尿病の予防効果も期待できる。

 さらにタンサ(短鎖)脂肪酸には腸内の悪玉菌を抑える殺菌・静菌作用や、ウイルスや病原菌から体を守る腸のバリアー機能を高める働きも。

 体内でのタンサ(短鎖)脂肪酸の産生メカニズムや、上手な増やし方のコツは、後編をチェックしてください。

「タンサ(短鎖)脂肪酸」をもっと詳しく知るなら

取材・文/やまきひろみ イラスト/チブカマミ 構成/横濱啓子(remix-inc.)

木村郁夫さん
京都大学大学院生命科学研究科 生体システム学分野 同院薬学研究科 神経機能制御学分野 教授
木村郁夫さん 博士(薬学)。東京農工大学 大学院農学研究院 代謝機能制御学研究室 特任教授。腸内フローラ研究のトップリーダーの一人。多種多様な食由来代謝産物群の分子レベルでのメカニズムを、生体の受容体側から明らかにする研究を進める。