年齢とともに代謝が落ち、なんだか太りやすくなった気がする……そんな悩みを持つ人も多いのでは? 肥満は体形だけでなく健康にも大きな影響を与えてしまいます。生活習慣病予防の第一歩は「太らない」ことでもあるのです。そこで、「太りにくい体づくり」のために注目したいのが、次世代スーパー物質とも呼ばれる「タンサ(短鎖)脂肪酸」。肥満を抑制するさまざまな働きが最新研究でわかってきました!

肥満は生活習慣病や死亡のリスクを高める

 「やせたい!」という願望は世代を問わず多いが、見た目だけでなく「体脂肪」にも注意を払いたい。そもそも「肥満」とは、体重が多いだけでなく、体脂肪が過剰に蓄積した状態を指す。女性には、標準的な体形でも体脂肪率が高い「隠れ肥満」も多く見られるため注意が必要だ。

 体脂肪が過剰に蓄積した肥満は、糖尿病や脂質異常症、高血圧症、心血管疾患などの生活習慣病のリスクを高めてしまう。さらに、死亡リスクとも相関関係があることが分かっている(下グラフ参照)。

 このグラフは、日本人の成人女性19万1330人を対象に、平均13年間にわたり行われた追跡調査の結果だ。BMI(※)23-25を基準(ハザード比=1)として、各BMIグループと比較した相対リスクで死亡リスクを示している。BMIが20.9以下と低過ぎる(痩せ過ぎている)場合や、30以上と肥満度が高い場合に死亡リスクが有意に高くなっている。 (データ:Journal of Epidemiology 21,417-430,2011)

 人生100年時代、健康をキープするためにも体脂肪をためず、太りにくい体づくりを心掛けたい。

※BMI 肥満度を表す指標として国際的に用いられている体格指数で、[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]で求められる。日本肥満学会は18.5未満が「低体重(やせ)」、18.5以上25未満が「普通体重」、25以上が「肥満」を基準としている。

「太りにくい体」の秘密は腸内環境にあり

 とはいえ、加齢とともに基礎代謝は低下。また、脂肪の代謝を促す女性ホルモン・エストロゲンが減少することで、余分な脂肪がたまりやすい傾向に。

 うっかりすると太りやすくなるからこそ、予防のために着目したいのが腸内環境だ。「肥満型とやせ型のヒトやマウスの腸内フローラ(細菌叢)には、大きな違いがあることが複数の研究からわかっています」と話すのは、京都大学大学院生命科学研究科教授の木村郁夫さん。

 2006年に米ワシントン大学の研究グループが発表した研究(下グラフ参照)で、肥満の人はそうでない人に比べて、腸内フローラに生息する「バクテロイデス門」に属する菌が少なく、「ファーミキューテス門」に属する菌が多かったことが報告されている。さらに肥満の人が減量することで、こうした腸内フローラの偏りが解消されたという。

肥満傾向の人はやせている人に比べてタンサ(短鎖)脂肪酸をつくり出す“やせ菌”が少ない
肥満傾向の人はやせている人に比べてタンサ(短鎖)脂肪酸をつくり出す“やせ菌”が少ない
ヒトの肥満者と非肥満者の腸内フローラを網羅的遺伝子解析により比較。肥満者は非肥満者に比べてファーミキューテス門の菌の割合が多く、バクテロイデス門の菌の割合が少ないが、肥満者に低脂質食、低糖質食いずれかの食事療法を実施したところ、減量するにつれて非肥満者の腸内細菌のバランスに近づいた。
(データ:Nature 444 ,1022-1023, 2006)