「太りにくい体づくり」のために注目されている次世代スーパー物質「タンサ(短鎖)脂肪酸」。後編では、その「働き」と「増やし方」に着目します。新時代の腸活のカギになるこの物質は、体のどこで作られ、どのように作用するのか。日常生活の中でタンサ(短鎖)脂肪酸を増やすコツは何なのか、最新研究を紐解きながら解説します。

前編『太りにくい体へ カギはタンサ(短鎖)脂肪酸!』

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さまざまなアプローチで肥満を予防

 タンサ(短鎖)脂肪酸とはその名の通り脂肪酸の一種で、酢酸、酪酸、プロピオン酸の3種類に代表される。

 「脂肪酸は主に体のエネルギー源として使われますが、そのほかにも器官や細胞に存在するセンサー(受容体)を介してさまざまな効果を発揮します。タンサ(短鎖)脂肪酸は腸でつくられた後、血液に乗って臓器や脂肪細胞などの末梢(まっしょう)組織まで届き、肥満予防に働くことがわかっているのです」(木村さん)

食事で摂取した食物繊維が消化されずに腸まで届き、ビフィズス菌などの腸内細菌によって分解されることで、タンサ(短鎖)脂肪酸が産生される。腸壁から吸収されたタンサ(短鎖)脂肪酸は血液に乗って全身を巡る。このうち、酢酸とプロピオン酸は白色脂肪細胞に発現する受容体「GPR43」の働きを活性化。インスリン受容体に働きかけて、過剰なエネルギーが脂肪細胞に取り込まれないようにする。酪酸とプロピオン酸は交感神経に発現する受容体「GPR41」の働きを活性化。ノルアドレナリンの分泌が促進され、心拍・体温が上昇し、エネルギー消費が高まる。
食事で摂取した食物繊維が消化されずに腸まで届き、ビフィズス菌などの腸内細菌によって分解されることで、タンサ(短鎖)脂肪酸が産生される。腸壁から吸収されたタンサ(短鎖)脂肪酸は血液に乗って全身を巡る。このうち、酢酸とプロピオン酸は白色脂肪細胞に発現する受容体「GPR43」の働きを活性化。インスリン受容体に働きかけて、過剰なエネルギーが脂肪細胞に取り込まれないようにする。酪酸とプロピオン酸は交感神経に発現する受容体「GPR41」の働きを活性化。ノルアドレナリンの分泌が促進され、心拍・体温が上昇し、エネルギー消費が高まる。

 木村さんが研究でつきとめたタンサ(短鎖)脂肪酸の代表的な受容体が「GPR41」「GPR43」だ。

 「どちらにも腸管ホルモンの分泌を促す作用があり、食欲の抑制や食後血糖を抑えるインスリンの分泌を促進する働きがあります。また、GPR41には交感神経の働きを活性化してエネルギー消費を高める、GPR43には脂肪細胞に過剰なエネルギーが取り込まれるのを抑えるといった働きもあります」(木村さん)

 タンサ(短鎖)脂肪酸は、その多彩な働きを通して、肥満予防が期待されるのだ。

タンサ(短鎖)脂肪酸をつくり出すカギは「食物繊維」

 太りにくい体に近づけるには、タンサ(短鎖)脂肪酸をつくり出すことが重要だ。そして、そのために欠かせないもののひとつが食物繊維。

 「食物繊維は、炭水化物やでんぷんと同じ多糖類の一種です。炭水化物やでんぷんは消化酵素で消化されて単糖に変わり、小腸で吸収されます。しかし食物繊維は難消化性のため、消化酵素で消化することができず、そのまま大腸に届きます。そこで、“やせ菌”のバクテロイデス門の菌(前編参照)や、善玉菌といわれるビフィズス菌などの腸内細菌が食物繊維を分解して糖に変え、自分のエサとして利用します。その代謝産物としてタンサ(短鎖)脂肪酸がつくられるのです」(木村さん)

 マウスを用いた最近の研究では、妊娠中の母親が十分に食物繊維を摂取すると、産生されたタンサ(短鎖)脂肪酸が胎児の受容体を介して影響を与え、生まれた子が肥満になりにくい体質になることも明らかに(※)。とかく不足しがちな食物繊維だが、ぜひ意識的に摂取する習慣をつけたい。

(※)Science 367,6481,2020