不当なことは流さず書き留める、つらければ逃げる
── 作品の中で、ジョアンナが経験する挫折やネガティブな出来事は、彼女に非があるというよりは、「さえない子」扱いされていたジョアンナに向けられた奇異な視線や、若い女性に対する偏見や差別といった外的要因によるものという印象を得ました。私たちが同じような境遇に陥ったとき、どのように自分と向き合い、進んでいくのが大事だと思いますか?
モラン 働いている環境で、自分が過小評価されているとか不当な扱いを受けていると感じたとき、その場にとどまっていられるのであれば、できるだけそこに残ってスパイ行為のようにアウトサイダーの立場から日々の出来事を書きつづっておくといいですよ。「セクシズムって何なのだろう?」などと考えることは糧になりますし、自分にとってだけではなく、他の人の役に立つこともあるでしょうから。
けれども、周りの人が「会社がイヤなら辞めたら?」とか言うんですよね、そんなに急に辞めたりできないのに。
── 多くの女性はそこに悩んでいるはずですね。
モラン つらいときは、同様にその場の居心地が悪いと思っている同士を見つけて、世の中をより良くするために新しいことを始めるべく、その場から逃げるというのも手ですね。人生には、最高の瞬間もあれば、最悪の瞬間もあります。でも後者は、後で人に語れるような素晴らしいストーリーになることが多々あります。もちろんそれは最悪なだけに全く簡単ではないですが、世の中の素晴らしいものの多くはそんなふうに生まれてきたわけです。
映画『ビルド・ア・ガール』はまさにそのような状況下で制作された作品ですね。いまだに映画産業は男性社会という中で、3人の女性が「自分たちの映画を作らなくちゃ」と奮起して制作会社を立ち上げました。作品に関わったスタッフの大半が女性です。できる限りフェミニズムが生かされる作品になれば、と私も願っていました。