ワクチンを接種した10~16歳で がん発症リスクが88%も減少
稲葉 2020年、スウェーデンのカロリンスカ研究所から、2006~17年の間にワクチンを一度でも接種した約53万人と、接種しなかった約115万人について、がんの発症リスクを比べたところ、年齢別では10~16歳は88%、17~30歳は53%、全体では63%の人が子宮頸がんの発症リスクが減少するという研究結果が発表されました。こちらが子宮頸がんを予防するという最新のデータです。
―― ちゃんと科学的な根拠があるんですね。10~16歳では88%とかなりの効果です。逆にいうと、日本では未接種のため、それだけの人が危険にさらされていると。
稲葉 そうなんです。だから、無料で定期接種を受けられる小学校6年生~高校1年生の人はぜひ接種を検討してください。
子宮頸がんの主な原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)は性交渉によって感染しますので、性交渉を持つまでに接種することが大事です。
―― これまで日本国内では「積極的な勧奨は控える」としていたけれども、定期接種は続いているのですか。
稲葉 はい。定期接種まで中止になっていると勘違いされがちですが、続いています。でも、対象年齢の少女たちが、わざわざ自分から子宮頸がん予防のためのワクチンの情報を収集するかというと疑問です。だから私たち医師や学校などの教育機関、周囲の大人が知らせなくてはいけません。だから私も「毎日しつこくて、すみません。子宮頸がんはワクチンで予防できますよ。高1までは無料です」とSNSに投稿しています。
皆さんも自分の子どもや親戚、年下の友人や中高生の娘がいる友人がいたら、ぜひワクチンについて教えてあげてください。
―― 正しい情報を得たいと思ったら、どこを調べればいいですか。
稲葉 厚労省や日本産科婦人科学会にも情報はありますが、もし内容が少し難しいと感じたら、私が代表理事を務める「みんパピ!」で、ワクチンに関する疑問や効果、子宮頸がんという病気について、とても分かりやすく解説しています。ぜひ参考にしてください。
ワクチン未接種の世代はどうすればいい?
―― 少女たちに正しい知識を伝える一方、日経xwomanの読者層は「ワクチンがなかった」「接種の機会がなかった」という人も多くいます。こうした世代はどうすればいいでしょうか。
稲葉 ヒトパピローマウイルスは性交渉によって感染します。すでに性交渉の経験があっても、接種して以降の新たな感染を防ぐことができるので十分に有効です。自費で約5万円かかりますが、26歳までは接種したほうが効果が費用を上回るといわれています。
とはいえ5万円は高いですし、もし接種しないとしても、20歳をすぎたら2年ごとの子宮頸がん検診は必ず受けましょう。子宮頸がん検診は補助が出る自治体が多いので、住んでいる市区町村に問い合せてみてください。