2021年10月、日本労働組合総連合会(連合)の新会長に、これまで副会長を務めていた芳野友子さんが選任されました。1989年に連合が結成されて以来、女性の会長が誕生するのは初めてのことです。約700万人の組合員が所属する組織のトップに抜てきされたときの心境や連合会長として目指す未来を聞きました。

男女の賃金格差を是正するため、女性委員会を発足

 高校卒業後、ミシンメーカーのJUKIへ入社した芳野さん。ミシンは女性がよく使うものというイメージですが、製造業ということもあり、圧倒的に男性の多い職場でした。入社2年目のとき、組合の専従にならないかと声をかけられ、以降、組合業務に従事することになります。当初、組合に興味はなかったものの、職場での男女間格差を目の当たりにし、労働環境の是正に取り組むようになったといいます。

 「特に感じたのは、賃金格差です。社内結婚が増えたので、必然的に夫婦間でお互いの賃金を把握するようになります。すると、組合員から『性別によって賃金の格差があるのでは?』という声が上がるようになりました。そこで1991年、女性たちの意見を集めるため、女性委員会を設立しました。さらに、賃金全般を調査する賃金専門委員会に女性の参画を実現させました。するとやはり、女性のほうが賃金が低いことが分かりました」

 1996年には性別による賃金格差を是正し、労働環境を男女平等にするために、女性委員会の名称を「雇用平等委員会」に変更しました。

 「女性の意見を取り入れるために、1998年からは組合すべての専門委員会に女性を登用しています。しかも1人でなく複数です。男性の中に女性が1人いるだけでは、女性は発言しにくい雰囲気があるからです」

連合会長芳野友子さん。中小企業が中心の労働組合出身者が会長に選ばれたのも芳野さんが初めて
連合会長芳野友子さん。中小企業が中心の労働組合出身者が会長に選ばれたのも芳野さんが初めて