コロナ禍の運動不足や食べすぎを反省し、そろそろダイエットや健康維持のために運動を始めよう……そう思っている人も多いのではないだろうか。特別な道具や準備、場所を問わず手っ取り早く始められるものといえば「ランニング」だが、ランニングはどうも続かない、関節が痛くて走れない、そもそも走りたくないという人に朗報だ。我慢して走らなくても、ある一定以上の速歩きを「速歩き」すれば、走る以上のエネルギー消費が期待できるという。

 ダイエットといえばランニングという考えはもう古いのかもしれない。「走る」より「歩く」ほうが、効率よくエネルギーが消費できる──そんな驚きの新事実が明らかになっている。

 立命館大学スポーツ健康科学部教授の後藤一成さんとアシックススポーツ工学研究所の共同研究によるもので、時速7km以上のファストウォーキング(速歩き)は、同じ速度のランニングよりも多くエネルギーを消費するというのだ。

時速7.5kmでエネルギー消費量がランニングを上回る
時速7.5kmでエネルギー消費量がランニングを上回る
20代の男女36人が対象。ウォーキングは時速3kmから歩き続けることのできる最高速度まで、ランニングは時速5kmからウォーキングの最高速度を超えるまで行った。速度ごとのエネルギー消費量を計測すると、ウォーキングで時速7.5km以上になるとランニングを上回った。(データ:後藤さん)

 ランニングは、エネルギー消費量が多く、心肺機能の強化や血流改善、持久力の向上などにも役立つが、一方で、着地の度に体重の2倍以上もの衝撃が加わるため、「筋肉や関節、腱に大きな負担となるうえ、貧血を誘発しやすい」と後藤さん。

 貧血の理由は、足裏への衝撃で赤血球が破壊される「溶血」が起こるからだ。赤血球が破壊されることで、酸素の運搬量が低下するというのもあるが、「赤血球の中の鉄分が大量に血中に放出されると、ヘプシジンというホルモンが分泌され、食事からの鉄の吸収が抑制されてしまう。これが続くと慢性的な鉄欠乏貧血につながる恐れがある」と後藤さんは説明する。鉄欠乏性貧血は、女性アスリートに顕著で、「ロンドン五輪の派遣前メディカルチェックでは、5人に1人が鉄欠乏状態だったという報告もある」(後藤さん)。