本特集では主に老化対策を紹介しているが、この寿命が延びていく時代に、医療の進化はどう関わるのだろうか。この記事では、未来の医療について紹介する。久しぶりに受診すると、治療法が進化していて驚いた、といった経験はないだろうか。新型コロナワクチンが凄まじいスピードで開発されたように、医療技術は加速度的に進歩し、今後ますます変貌していくのは確実だろう。人間が病気では簡単には死ななくなる時代が到来する──。そこで、『未来の医療年表』(講談社現代新書)の著者で、医療未来学を専門とする奥真也さんに、私たちが今知っておくべきことを聞いていく。

「進化する医療とのつきあい方」
第1回 がんも「なおる」時代へ 未来の医療、知っておくべきは ←今回はココ
第2回 コロナ禍に科学は10年進んだ 3つのキーワード
第3回 「90歳で健康体」が当たり前の時代が来る

 第1回では、遺伝子技術の進化や医療リテラシーの重要性などについて伺っていく。奥さんは、これからは「一般の人も医療について知らないと損をする」時代になると語る。

写真はイメージ=123RF
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人間が簡単には死なない時代が来る

 今から約20数年後には「感染症の脅威から解放」され、「がんの大半は治癒可能」になる――。医療未来学を専門とする医師・奥真也さんは、著書『未来の医療年表  10年後の病気と健康のこと』(講談社現代新書)で、すぐそこにある医療の未来を詳細に年表にして予測している。

 奥さんは、放射線医として臨床医を経験した後、がんを治療する「核医学」を研究、その後、医療情報を医学と医療に役立てる「医療情報学」の分野に転じ、経営学修士(MBA)も取得。さらには東京大学の准教授として特定健診制度の設計にも携わり、製薬会社、薬事コンサルティング会社に勤務するなど、医療にまつわる多様な経歴の持ち主だ 。医師という立場だけでなく、製薬や法制度といった観点からも医療を見てきたからこそ得られた幅広い見識で、医療の未来を予測する。

著書『未来の医療年表』では、医学、医療、科学、製薬、そして社会から見た医療制度や経済学など、奥さんがこれまで経験されてきたさまざまな視点をもとに、これからの医療について解説されています。

奥真也さん(以下、奥) 製薬会社に勤務したときには、病院で医者として見ていた風景と全く違う方向から医療を見直すことになりました。そうした観察の積み重ねから見えてきた医療の未来についてまとめてみたいと思い、この著書が生まれました。

著書では、今後、医療技術が進化していくことを解説されていますが、それがどう自分と関わってくるのだろうかと思う方も多いと思います。私たちが「まず知っておいたほうがいい」ポイントを一つ挙げていただくとしたら、何でしょうか。

 今後の医療技術の進化によってひと通りの病気は「なおる」、つまり「人間が簡単には死ななくなる時代が来る」ということはぜひ知っておかれると良いと思います。

 多くの人はまだそこを実感として認識されていません。がんや糖尿病、神経難病といった遺伝子が関わる疾患の懸念は大きく下がります。解決法があるわけですから、健診を受けることも怖くなくなるとか、プラスの側面が見えてきます。「死なない時代」だなんて絵空事みたいなことを言う、と思われるかもしれませんが、遺伝子科学が完成しつつあるという根拠があるので、こういうことを言えるのです。