本特集では主に老化対策を紹介しているが、この寿命が延びていく時代に、医療の進化はどう関わるのだろうか。この記事では、『未来の医療年表』の著者である医師の奥真也さんに聞いていく。第2回は、私たちが直面しているコロナ対策・治療における影響、AIの進化が今後の医療にどう影響するか、などについて。奥さんは今後、AIは日常の診療で普通に活用されるようになると話す。X線写真やCTなどの画像診断の精度は、AIでは人間の医師の追随を許さないレベルに達しているという。

「進化する医療とのつきあい方」
第1回 がんも「なおる」時代へ 未来の医療、知っておくべきは
第2回 コロナ禍に科学は10年進んだ 医療の進化の背景には ←今回はココ
第3回 「90歳で健康体」が当たり前の時代が来る

写真はイメージ=123RF
写真はイメージ=123RF

遺伝子解析技術は新型コロナのワクチンや治療に大きな影響を与えた

前回は、2000年代以降の遺伝子解析技術が、医療の進化をどのように推し進めたかについて聞きました。遺伝子解析技術は、新型コロナウイルスのワクチンや治療にも関わっているのでしょうか。

奥真也さん(以下、奥) 新型コロナウイルスの最初の患者さんが中国の武漢で入院したのが2019年12月でした。ウイルスの全塩基配列は、2020年2月に『ネイチャー』誌に掲載されています。つまり、わずか2カ月足らずという期間でウイルスの特徴が明らかになったのです。ウイルスの特徴が明らかになるまでの期間は、歴史上の他の感染症と比較して圧倒的に短期間でした。

そうだったのですね。とはいえ、度重なる変異や感染拡大という現実を繰り返し目にすると、未知なる感染症には歯が立たないのではと思ってしまいます。

 確かに手こずってはいますが、これまでの感染症と比べると、上記のように対応は早く、これまでの遺伝子解析技術の進化が生かされたと思います。もちろん現在も厄介な状況は続いています。しかし、新型コロナウイルスは、“変異するのが身上”という特徴を持ったウイルスですから、専門家から見るとある程度予測されていたことと言えます。

 「ワクチンで時間稼ぎをして、治療薬が出てくるのを待とう」という戦略からは大きく外れていません。ワクチンの予約がなかなか取れなかった、という現実面の困難をいったん横に置くと、ワクチンを打ちたい人には接種を完了できる、という段階に到達すれば、「一山越えた」と言えると思います。それは明らかに、去年の「ワクチンなんて存在しなかった」状況とは違っていますよね。感染し重症化して生きるか死ぬかという状況になる確率は劇的に減るからです。

 何より、開発に10年かかるとも言われていたメッセンジャーRNAワクチンが1年以内に登場したことが非常に重要だったと思います。

 新型コロナウイルスはRNAウイルスで、変異の速さを特徴とします。その特徴ゆえに、ワクチンを作るのが一段と難しいのです。じっと椅子に座っていないモデルの似顔絵を描くのが難しいのと同じです。