がんや糖尿病は治る時代となり、「90歳で健康体」ということは当たり前の時代が来る、と『未来の医療年表』の著者で医師の奥真也さんは言う。シリーズ最終回の今回は、近い将来にやってくる「人が簡単には死なない時代」に戸惑わないために、私たちが今から始めておくべきことを聞いていく。奥さんは、「自らの死についてイメージする」「寿命がある臓器を節約する意識を持つ」ことが大切になると話す。

「進化する医療とのつきあい方」
第1回 がんも「なおる」時代へ 未来の医療、知っておくべきは
第2回 コロナ禍に科学は10年進んだ 医療の進化の背景には
第3回 「90歳で健康体」が当たり前の時代へ、備えるべきは ←今回はココ

写真はイメージ=123RF
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80歳、90歳で健康 「で、何するの?」まで考えたい

今回お話を伺って、医療技術の発達によってさまざまな病気は治療可能になること、また、医療現場にはAIが当たり前に組み込まれるようになることなどをイメージすることができました。近年、「人生100年時代」と言われるようになったのは、そのような背景があったからなのですね。

奥真也さん(以下、奥) そうです。厚生労働省は2000年過ぎから、生涯健康を実現する一環として「健康寿命」というキーワードを提唱し始めました。「健康日本21」というプロジェクトでも、健康寿命の延伸の重要性が掲げられました。

 健康寿命を延ばさずに、ただ寿命を延伸しても厳しい。そこで、健康を阻む生活習慣病をやっつけよう、と特定健診制度を作ったという流れがありました。質が高い人生でないと、長いだけでは仕方がない、そこまでは健康日本21の価値観でした。しかし、実際に人生が長くなってきたら、その次を考えなければいけないよね、ということも強調したいですね。

 つまり、90歳で健康です、とか、80歳で元気でおいしいものも食べられ、外出もどんどんできています、というようなことへのハードルは低くなりました。そこで大切になるのは「で、何するの?」ということです。

なるほど……。例えるなら、スマホがあってもアプリが何も入っていないと世界が広がらない、というようなことでしょうか。

 そんな感じです。80歳で健康な体、というのがスマホ本体とすれば、どういうアプリを入れようか、アプリによってはお金もかかるし価格差もあるから、どれを選択しようかとか、作戦を練る必要があるでしょう。

 スマホまでは医療によって提供してもらえるけれど、そこから何をどう最適化して楽しく生きていくか、というのは別問題で、それぞれの人が考えていかなくてはなりません。