いつまでも若くて動ける体でいるためのカギとなる「筋肉」。「筋肉の量」にだけ目が行きがちだが「量」だけではダメ。いざというときに使える「筋力」や「筋肉の質」も重要だ。量、質、力の3つが揃った「使える筋肉」づくりを始めよう。特集では、筋機能維持のトレーニングとして今すぐ実践してもらいたい「ムーブメント筋トレ」と「ミニジャンプ」を紹介する。

 肥満の改善はもちろん、糖尿病や高血圧などの生活習慣病予防、心疾患や認知症のリスクの低下にも「運動」が有効なことが明らかになってきた。そんな万能な抗老化メソッドである「運動」で重要なのが筋肉だ。

 加齢に伴う筋肉量の低下は、糖尿病やフレイル(虚弱状態)のリスクを増加させる。ただし、筋肉の“量”さえ多ければいいというものではないようだ。

 アスリートも多く指導するパーソナルトレーナーの鑄山(いかけやま)和裕さんによると、「筋肉量が十分でも、スムーズに動けない“使えない筋肉”の人がいる。“使える筋肉”を維持するには、筋肉の量だけでなく、質も筋力も伴う筋機能を維持することが重要」という。

「筋機能」は3つの要素からなる
「筋機能」は3つの要素からなる
いつまでも、自分の体で若々しく動くためには十分な筋肉(骨格筋)が必要だが、最近の研究で、筋力は筋肉量に伴うとは限らないことがわかってきた。筋線維が細く、脂肪が入り込んでいたり(=筋質の低下)、脳からの指令が筋肉にうまく伝わらないとうまく力が発揮できない(=筋力の低下)からだ。筋肉の機能を維持するには、筋肉量だけでなく、筋質、筋力も伴うことが大切だ。

 筋機能の維持に重要なのは、負荷を大きくすることではなく、動きの中で筋肉を使っていくことだ。

 「本来、日常生活で、しゃがんだり立ち上がったりという動きを繰り返していれば、スムーズに動けて、いざというときには体を支えられる十分な筋機能を維持できるが、人は年をとるにつれ、より少なく、効率よく動くようになり、筋肉を甘やかしてしまう」(鑄山さん)。この“甘やかし”が筋機能を低下させる原因だという。

筋機能アップには「ムーブメント筋トレ」か「ミニジャンプ」

 筋機能維持のトレーニングとして、鑄山さんが提案してくれたのは「ムーブメント筋トレ」と「ミニジャンプ」だ。

 一見簡単にみえる一連の動きのなかには、しゃがんだり、立ち上がったり、体を支えたりといった動きが入っていて、筋トレ要素やストレッチ要素、有酸素運動の要素も含まれる。

 「筋機能を高めるには、必ずしも負荷をかけたキツい筋トレである必要はない。それよりも、こういった動作を繰り返すことが大事」と鑄山さん。強度が低くても、繰り返すことで、加齢によって筋機能が低下しやすい下半身や体幹部の筋機能が高まるという。

 「低強度トレーニングでも、回数を増やすことで、高負荷のトレーニングと同等の効果が得られることを示す研究はいくつかある」(鑄山さん)。そのひとつを紹介しておこう。

低強度トレーニングも繰り返すことで高強度と同等の効果が得られる
低強度トレーニングも繰り返すことで高強度と同等の効果が得られる
トレーニングをしていない18人の健康な男性に、レッグエクステンションを反復可能性最大重量(1RM)の80%、または30%強度を行う群に分け、疲労困憊までのトレーニングを1日3セット、週3回、10週間続けさせ、大腿四頭筋の筋肉量を比較した。結果、両群とも筋肉量は増えていたものの、差は見られなかった。(J Appl Physiol (1985)2012 Jul;113(1):71-7)

 次のページからは、2種類の「ムーブメント筋トレ」のやり方を見ていこう。