閉経前後の約10年間に及ぶ更年期。感じるかどうかは個人差があるけれど、誰でも体が劇的に変化します。恥ずかしいからとつい我慢しがちな不調や不快感も、適切な診療やセルフケアで予防や改善が可能です!第1回は、エストロゲンの基礎知識について解説します。受容体によって働きが違うなど、エストロゲンの最新情報を紹介しています。

誰にでもくる更年期を上手に乗り切る「閉経の真実」
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45歳ごろから女性ホルモンが激減する

 閉経とは、月経が完全に停止した状態のこと。医学的には月経がこない状態が12カ月以上続いたときに、1年前を振り返って「閉経」と診断される。

「月経が止まるのは、加齢とともに卵子・卵胞の減少によって卵巣の機能が低下し、女性ホルモンのエストロゲンの分泌量が減少していくため。どの女性の体にも等しく起こる、自然な現象の一つだ」と、東京大学大学院医学系研究科生殖・発達・加齢医学専攻産婦人科学講座の平池修准教授は話す。

 閉経年齢は個人差が大きいが、平均的な年齢は50歳前後。更年期は、その前後5年間の約10年間を指す。一般的には、45~55歳ごろに、更年期障害による心身のさまざまな不調を生じやすくなる傾向にある。不調があり受診するべきか迷う人は、第2回の簡略更年期指数(SMI)のチェックで確認を。

 更年期というとのぼせやほてり、脂質異常症などが注目されるが、最近の研究でエストロゲンの多様な働きが明らかになり、これまで対策が進んでこなかった更年期特有の不快症状の新たな治療が注目されている。

「外陰部のかゆみや腟炎、性交痛や尿失禁といった生殖器系や泌尿器系のトラブルや、関節痛などの症状が閉経前の比較的早い時期に現れやすいことはまだ知らない人も多い。腟が乾燥するせいでむずむずして落ち着かないなど不快感を抱えたまま生活することで、社会的な能力を発揮できなくなっているケースも見られる。気になる症状がある場合、婦人科などを受診して」と平池准教授は話す。