消化器内科医で、腸内細菌や抗加齢医学に詳しい京都府立医科大学の内藤裕二教授に、腸内細菌について教えていただく本連載。前回は、日本人の腸内細菌叢の特徴や、腸内細菌に影響を与える要因について解説していただきました。今回は日本人の腸内細菌の分析結果から見えてきた「5つの腸内細菌タイプ」、そして腸年齢の調べ方について詳しく聞いていきましょう。
前回は、日本人の腸内細菌叢の特徴について解説した。日本人の腸内細菌叢は、世界的に見て非常に特殊。ビフィズス菌は日本人の腸には多いが、欧米の人の腸にはほとんどいない。また、日本人は海苔やワカメに含まれる多糖の分解酵素を持っているなど他の国の人には見られない特徴がある。
腸内細菌に影響を与える要因についても研究が進んでいる。日本人の腸内細菌は薬剤による影響を強く受けていることが明らかになっている。また、食事も腸内細菌に影響する。例えば、動物性たんぱく質を多く食べていると増える菌が、植物性たんぱく質を多く食べている人では減る。幼少期の環境や健康状態なども腸内細菌に影響する。
腸内細菌から、その人の「生活」が見えてくる
内藤さんらの研究チームも、日本人の腸内細菌叢をタイプ分けして、食事や病気などと関連づけているという。健康な人283人を含む約1800人の糞便から腸内細菌を解析してAIを使って分類したもので、5つの「エンテロ(=腸)タイプ」に大別できること、また男性と女性で保有する菌に違いがあることが明らかになったという。

「このデータと食事調査、過去に行った長寿研究などからわかってきた情報をまとめ、エンテロタイプごとの特徴や食事の傾向をまとめました」と内藤さん(下図)。
とくに日本人に多いのは「バクテロイデスとフィーカリバクテリウムが多い」Bタイプ(全体の52%)と、「プレボテラが多い」Eタイプ(同22%)で、この2タイプで全体の7割を超えていた。「BとEはどちらも病気リスクの少ない健康な人によく見られるタイプですが、食事内容が大きく異なります」(内藤さん)。