ちょっ…! 言い方! 弱った患者を痛めつけないで

 お医者さんの伝え方に傷ついたことはありませんか?

 カーテン1枚隔てた隣のベッドから「あなたの状態のがんで3カ月以上生きた人は世界中にひとりもいない」と聞こえてきたとき、わたしは、心臓が止まりそうな、少なくとも時が止まったような大きなショックを受けました。

 言い方っ!!

 彼女がどんな気持ちでいるのかと思うと、その夜は全く眠れませんでした。隣のベッドからも一晩中、寝返りのような音が聞こえていたのを覚えています。

 その後身内にも、同じような経験がありました。

 よくあるお盆の親戚の集まり。地元・福岡に帰ってワイワイ楽しく飲んでいたとき、叔父がおずおずと「僕は治療したいのに去年の12月から先生がお薬も何も出してくれなくなって」と相談してきたのです。びっくりしました。叔父はステージ4の大腸がん。8カ月もの間、無治療で放置されていたなんて信じられません。

 そのときはいったん東京に帰りましたが、1週間後の叔父の診察日、朝一の便でわたしは再び福岡へ飛び、診察に同行したのです。先生にもお考えがあってのことだろうから、ちゃんと伺って話し合いたいと。

 叔父の主治医は消化器外科の、○○部長といった役職の付いた先生でした。

「本人は治療を希望しています。なぜ治療が止まっているのでしょうか?」
「ご本人が足がつるから点滴は嫌だと断ったんですよ」

 確かに抗がん剤が合わず、足がつったため、主治医に相談したとは聞いていました。足がつるのは危険ということで抗がん剤の点滴が中止になったことも。

「断ってはいないはずです。足がつるという副作用をご報告したら、先生のほうで点滴を中断されたと聞いています。現に本人は治療の継続を望んでいます」

 言った、言わないの水掛け論をここで始めても意味はありません。

「点滴以外にも、飲むタイプの抗がん剤が、標準的な選択肢として残っているはずですが、どうでしょうか?」

 すると医師は、叔父が目の前にいるというのに信じられない言葉を放ちました。

「薬、飲みますか? どうせ飲んでも飲まなくても数カ月で死ぬんですよ」

 あー! 録音しておけばよかったと、その瞬間思いました! こんなに患者を傷つけるお医者さんがココにいますよーと世界中に伝えたい!

 そのお医者さんもあえて言い放つことが優しさとのお考えかもしれません。でも現に、わたしの目の前で、体が限界まで弱っている患者が、心までズタボロにたたきのめされていたのです。叔父はその後、眠れなくなってしまいました。

 患者の命を預かるお立場であるのなら、患者や家族を傷つけないコミュニケーション術も身に付けてほしいと、患者の立場からは切に願います。実際は言葉を選んでくれる先生のほうが多いんですけどね! 皆さんの先生はどうですか?

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【マンガ】がんと闘わないと決めたワケ たむらようこ

構成・文/たむらようこ イラスト/八谷 美幸

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