あなたの指示を部下は「聞いていない」かも?

 私が渡米して真っ先に学んだのが、「信頼関係」の重要性です。マネジメントは信頼関係がすべてといっても過言ではありません。「何を言うかよりも、誰が言うか」というのはまさしくそうで、上司と部下の間に信頼関係があればこそ、部下は上司の指示や指導を受け入れます。

世代や価値観の違い、そして「リアル」での接触機会の減少。そんな状況下でチームを率いる現場リーダーが、まずすべきこととは?
世代や価値観の違い、そして「リアル」での接触機会の減少。そんな状況下でチームを率いる現場リーダーが、まずすべきこととは?

 信頼関係を築くために大切なのは「コミュニケーション」です。コミュニケーションというと、いまだに「飲みニケーション」が大事だと思っている人がいます。また、コミュニケーションの一環と称して「パワハラ・セクハラ発言」を繰り返す人もいます。しかし、それらをコミュニケーションと考えるのは間違いです。

 最近、政治家や有識者がパワハラ・セクハラ発言をして、相互の「コミュケーション不足」や「認識の違い」があったとして釈明するケースが相次ぎました。これは言語道断で、その人個人の資質の問題です。

 たとえ「上からの発言や指示」であっても、人間的に信頼できる相手でなければ、従おうとは思えないもの。近年は日本企業でも人材や仕事観、ワークスタイルなどの多様化が進み、職場での人間関係が築きづらくなっています。

 特に2020年以降、コロナ禍となってからは、直接顔を合わせる機会も減っている。そんな中で、部下やメンバーとどう信頼関係を築いていけばいいのでしょうか。

上司自ら「自己開示」して関係性をつくる

 まず実践してほしいのが、上司であるあなたからの「自己開示」です。自己開示というと難しそうに感じるかもしれませんが、雑談、いわゆる「アイスブレーク」の延長線上にあるものだと考えてもらえばいいでしょう。

 私が講師を務める「課長塾」などでも、受講者の皆さんには自己開示のトレーニングを最初にやっていただきます。業種や職種も違う管理職の人たちが5〜6人のグループに分かれて、順番に自己開示をしていただくのですが、「何を話したらいいのか分からない」という人が意外と多くいます。

 では、そんな時に何を話すのか。例えば、休日の過ごし方や熱中している趣味、最近読んだ本や見た映画などの話をするだけでもいいでしょう。リモートワークが中心になっているのなら、ランチや気分転換はどうしているかといった話もいいと思います。職場で見せる上司としての顔ではなく、「一人の人間としての顔」を見せることで、部下に親近感を持ってもらうことが自己開示の狙いです。

 ちなみにこの自己開示、一概には言えませんが、男性のほうが苦手意識が強い傾向にあるようです。女性の場合は日ごろから、会社だけでなく、家庭や地域、子どもの学校、習い事といったさまざまな場面でコミュニケーションの機会があるからかもしれません。

 自分から話をするのが得意ではないという人は、意識的に雑談の機会を増やしたり、雑談のパターンをいくつか用意しておいたりするといいでしょう。本や映画、スポーツ、家族やペットの話などとテーマを決めて、話題をストックしておけば話しやすくなります。

 この上司からの自己開示は、どんな職場、国や地域であっても、信頼関係を構築する上での基礎となります。上司と部下の関係性は、一方的な「指導」や「指示」を繰り返したところで、醸成できるものではありません。

 リモートワークが増えている今は特に、いきなり業務の話題から入らずに、上司からの雑談で話しやすい雰囲気を作ってから、本題に入るようにするといいでしょう。

 次回は、部下の「仕事ができない理由」を明らかにして、成果を上げる指導法を紹介します。

構成/田村知子

日経ビジネス課長塾オンデマンドより
本連載の著者である石田淳氏は、課長塾および課長塾オンデマンドの講師として活躍中です。課長塾オンデマンドでは、次世代リーダーが身に着けるべきスキルとして「行動科学による部下指導法」を解説しています。

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