「自分が思ったように部下が動いてくれない」「部下の指導法が分からない」――。そんな悩みを抱えている現場リーダーが、身に付けるべきスキルとは? 初回は「まずすべきこと」をご紹介(全4回)。

「部下が自発的に動いてくれない」「チームメンバーの成果が上がらない」「部下をどう指導したらいいのか分からない」

 私は日経ビジネスの「課長塾」をはじめ、多くの企業研修やセミナーで講師を務めてきましたが、こうした管理職や現場リーダーの方々から聞かれる「上司としての悩み」は昔から変化していないものです。

 新型コロナウイルスの感染拡大以降はリモートワークの機会が増えて、オンラインでの業務やコミュニケーションに戸惑う声もよく聞きます。ただ、時代が変わっても、リモートワークになっても、マネジメントの本質は変わりません。

 私は人間の行動に焦点を当てる「行動科学」に基づくマネジメントを専門としています。行動科学マネジメントで最も重視しているのは「再現性」です。すなわち、「いつ、どこで、誰がやっても同じ効果が得られる」ということ。このことこそが、マネジメントの本質なのです。

多くの日本企業では、マネジメントの方法論が体系化されていない。そのため多くの上司が、自分が受けてきた指導をそのまま部下に対して行い、壁に突き当たるのだという。
多くの日本企業では、マネジメントの方法論が体系化されていない。そのため多くの上司が、自分が受けてきた指導をそのまま部下に対して行い、壁に突き当たるのだという。

「経験則」で指導しても、部下はついてこない

 部下の育成に悩む上司の多くは、この「再現性のあるマネジメント」ができていません。なぜなら、そんなことは教わったことがないからです。「教え方」を教わったことがないのに、いきなりマネジメントをする立場になれば、どうしていいか分からず、つまずいてしまうのは当然のことでしょう。

 今の40〜50代の人たちは特に、上司の経験則に頼った指導を受けてきた人が多く、プレーヤーとしては優秀でも、マネジメントは思うようにいかないというケースが散見されます。部下のマネジメントでつまずく人によく見られるのが、「自分が受けてきた指導をそのまま部下に対して行う」というケース。

 例えば、「部下は叱ってこそ伸びる」と考える上司のもとで仕事をしてきた人は、同じように部下を叱ります。それも、部下が取った行動に対して叱るというよりは、「やる気がないからミスをするんだ」「もっと真剣に取り組め」などと言いながら、できない部下に対して感情的に叱ってしまうのです。そんな精神論や根性論を振りかざすようなマネジメントは、もはや通用しなくなっています。

 私自身も、企業勤務を経て起業した当時は、マネジメントに悩む一人でした。しかし、渡米して人間の行動を科学的に研究する「行動分析学」を学ぶうち、それをビジネスに応用して実践する「行動科学マネジメント」が大きな成果をあげていることに気がつきました。

 米国のグローバル企業では、人種や宗教、文化といった個々人の背景を越えて、部下やメンバーを指導していかなければいけません。その時に必要なのは、リーダーの経験や勘に基づく漠然とした指導ではなく、「再現性のあるマネジメント」です。

 ビジネスで成果や結果を出すために「望ましい行動」を具体的に分析して示し、実践させ、継続を可能にする。そんな行動科学に基づく体系的なマネジメントのヒントを、この連載で紹介していきたいと思います。