SNS(交流サイト)を積極的に運用する企業が増え、自身の経験やビジネススキルをSNSでアウトプットする個人も多くなった。半面、著名でない人でもアカウントが炎上している光景を見ることも。炎上のリスクを負ってまで会社員がSNSに投稿する意味はあるのか。個人がSNSに投稿するメリットは何か。黎明(れいめい)期からのSNS事情に精通するブロガーの徳力基彦さんに聞いた。

SNSの登場でコミュニケーションはプッシュ型からプル型に

 商品やサービスなどの企業情報をSNSで発信による時代になって久しい。一方で、投稿内容に関する誹謗(ひぼう)中傷が殺到する、いわゆる「炎上」を防止する目的で、仕事に関する個人のSNS利用を禁止する企業もあり、SNSはどこか「広告宣伝に使うツール」「個人でSNSを利用するのは危険」といったイメージがもたれやすい。しかし、SNS発信によって転職できた人、人脈を広げた人、顧客を獲得した人など、キャリアを強化する手段として活用する人がいるのも事実だ。

 「これからの時代、SNSの使い方を知らないことのほうがキャリア自律(自分のキャリアを自律的に決める)におけるデメリットが多い」と語るのは、黎明期からのSNS事情に精通するブロガーの徳力基彦さん。詳しく話を聞いた。

徳力基彦(とくりき・もとひこ) note株式会社 noteプロデューサー/ブロガー
徳力基彦(とくりき・もとひこ) note株式会社 noteプロデューサー/ブロガー
1972年生まれ。NTTやIT系コンサルティングファームなどを経て、アジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。社長や取締役CMO(最高マーケティング責任者)を歴任。現在はnoteプロデューサーとして、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNS活用のサポートを行う。個人でも日経MJやYahoo! ニュース個人のコラム連載など幅広く活動中。著書に「普通の人のためのSNSの教科書」「アルファブロガー」などがある

 「SNSは、自己アピールしたい人や会社の宣伝で使う情報発信ツールだと思われがちですが、本来は個人と個人とがコミュニケーションを行う場です。

 SNSが普及する前のコミュニケーション方法は、電話やメールなど、情報提供者のタイミングで発信され、受け取った人は(半ば強制的に)返事を求められるプッシュ型が中心でした。皆さんも、大事な商談やプレゼンの最中に電話がかかってきて、困った経験がありませんか? プッシュ型は、相手のリアクションを要求できる情報の提供方法としてなど有意義な面もありますが、一方で、受ける側からするとノイズになりやすい情報発信方法でもあります。

 一方でSNSは、情報を受け取る側が、受け取るかどうかや受け取るタイミングを決められる、プル型のコミュニケーションツールです。インターネットの普及とともに、情報を受け取る側が欲しい情報を欲しいタイミングで入手できる、プル型のコミュニケーションが好まれるようになってきています。そもそもプル型のコミュニケーションを一般人が使うことは、インターネットが普及する前は難しかったのです」(徳力さん)

SNSの普及により、コミュニケーションの流れはプッシュ型中心からプル型も選択可能に(図/徳力基彦さん提供)
SNSの普及により、コミュニケーションの流れはプッシュ型中心からプル型も選択可能に(図/徳力基彦さん提供)

 「SNSの普及以前の情報は企業やメディアからのトップダウンで流れていましたが、現代は個人がSNSなどで発信する情報が基となって事業でも活用される、ボトムアップの流れが多くなりました。そのため、ビジネスをする上では、SNSによる世間の意識変化や空気を読む重要性が高まっているのです。

 近年、ジェンダーに関する要素を含んだ広告のキャッチコピーの炎上が目立つようになりました。これは、ジェンダーに対する世間の意識変化を読めていない人が広告をつくってしまったことが原因の一つだと言われています。

 私自身も、今の若い世代との感覚のギャップは間違いなくあります。ただ、普段からSNS上のコミュニケーションに触れていることで、企業の中だけでなく、世間の空気を感じることもできるようになると思います。まだまだ日本では仕事上でのSNS利用の機会は少ないかもしれませんが、将来的にはSNSを使っていないことで損をすることも増えるはずです」(徳力さん)

 プル型のコミュニケーションツールとしてのSNSをより深く体感してもらうためにぜひ実践してほしいことがあると、徳力さんは言う。

SNSのメリット1
今後の主流になるプル型コミュニケーションを体感できる