元アナウンサーで現在はコミュニケーション研修事業やSDGs(持続可能な開発目標)経営コンサルティング事業を手掛ける大塚美幸さん。前編に引き続き、今回は大塚さんが子育てと、事業や研究を両立する上で感じたこと、大塚さん自身の人材育成事業や大学講師の知見から女性が自律的にキャリアを築くために大切な考え方について詳しく聞きました。
前編 アナウンサー経験から役員・従業員の育成事業で起業
後編 大塚美幸 女性が選択肢を増やすために必要なこと ←今回はココ

2.成長の基盤を築く…目の前の仕事に懸命に取り組む
3.背伸び…成長のために自分のキャパシティを広げてみる
4.コミュニケーション…人とのつながりから仕事が生まれる
選択肢を増やすために必要なこと
日経xwoman編集部(以下、――) 大塚さんは事業や大学院での研究と家事や育児をどうやって両立してきたのでしょうか?
大塚美幸さん(以下、大塚) 育児や家事、幼稚園の送迎などはすべて私がやっています。コロナ前はシッターさんに頼ることもありましたが、その代金も自分が稼いだ分で賄っています。その分、私が手掛けている事業や研究に夫は干渉しないことになっています。
―― とても大変ではないですか?
大塚 自分で選択肢を持つことができる環境をつくることが大切だと思ってやっています。私は大妻女子大学で講師をしていて、教え子たちにもそう伝えています。
実は「結婚したら専業主婦になりたい」と思っている学生が多いんです。私は専業主婦を否定するわけではなく、それで幸せな人もいると思います。しかし頼っていた結婚相手が後に嫌な性格に変わるかもしれない。病気になったり事故で亡くなってしまったりするかもしれない。離婚するかもしれない。先のことは誰にも分かりません。だから私は「社会とつながり続けることが大切。経済的に自立する考えを持ちましょう」とアドバイスしています。
子どもがいたら、自分が食べていく分プラスアルファの経済的余裕がないと離婚の選択さえできません。
自分で選択肢を持つことができる環境を作ることが大切だと考える。社会とのつながりを持ち、経済的に自立することを念頭に置いて行動している。
―― 学生さんたちはどんなことを身に付ければいいと思いますか?
大塚 大妻女子大学での講義で「就活」の話をしました。「なんとなく文系に進んでなんとなく事務職で就活する」「なんとなく秘書職に就く」のではなく、しっかり手に職をつけてほしいと思うのです。
だから、私のクライアントであるIT企業の学生インターンシップに、興味があると手を挙げた学生に行ってもらっています。そこで育った学生が実際にSEとして内定したというケースもあります。
今はそうやって文系の学生がITを学んでSEになることができますし、ITを理解した上で事務職に就くのは、「なんとなく事務職に就く」とは全く違います。だから「特に希望の職業がない人は全員SEになりましょう」と言っていて、今では周りの先生からも応援してもらえるようになりました。